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◆◆◆◆
「…………?」
右手に違和感を感じ、由樹は瞼を開けた。
髪の毛を洗っていたはずの自分の右手はいつの間にか、輪っかの形をした水面ノズルと繋がっていた。
(……な、なんだ?)
由樹は自由になる左手で顔の水滴を払うと、目の前の自分の右手を再度見つめた。
自分の手とノズルをつないでいるピンク色のもの。
シリコンでできているらしく、すぐに体温が移ったそれは力をいれると多少は変形した。
しかし色の可愛らしさとは裏腹に、明らかにそれは手錠の形をしていた。
「可愛いでしょそれ。柔らかいから、ちょっとやそっと暴れても洗面台を傷つけることはないんだ」
背後から響いた声に鳥肌が立つ。
振り返ろうとしたところで、唯一自由だったはずの左腕を背中側に捻り上げられる。
「痛っ!」
「俺に乱暴なことをさせないでよ、新谷君?」
左腕の痛みで振り返ることのできない由樹は、正面の鏡を睨んだ。
「どうせなら楽しもうよ」
そこには、自分の腕を押さえつけながら笑う紫雨の顔があった。