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登場人物
主人公【海月 優弦】ウミツキ ユズル
友達【暁 志弦】アカツキ シズル
優弦の関係者【星生 璃舞】セイリュウ リム
同性愛に対する、軽蔑等の意図はありません。不快な思いにさせてしまったら、申し訳ありません。
星の想い
昔から、僕の事を理解してくれる人は、周りに、誰一人として居無かった。まだ僕が小さかった頃、保育園に通っていた時の事だ。僕と、仲良くしてくれていた男の子に対して、友達の皆んなに抱いている『好き』とは、何かが違う『好き』を抱いた。幼さ故、其の時は、如何言う『好き』なのかが、分からなかった。其れでも、成長して行く度に、周りの子に抱く『好き』と、其の子にだけ抱く『好き』の、何が違うのかが、段々分かってくるのだ。其の子とは、小学校も一緒になった。其の事が、嬉しくて嬉しくて、堪らなかったのを憶えている。其の子も、友達としてでは無い『好き』を、理解し始めた頃。僕は、其の子へ、ずっと抱いていた周りの子とは違う『好き』を、伝えた。
「え………。」
「それ、本当に言ってる…?」
「う、うん…っ!」
ちゃんと伝わったかな…!なんて言ってくれるかな…!
「え…お前、ヤバ……。」
濡れると面倒で、邪魔臭い、濁った水の溜まりを見る様な、彼の時の視線を今でも憶えている。
僕が、其の子に告白した事は、直ぐに、学校中に知れ渡った。同じクラスの子も、保育園が同じだった子も、話した事が無い子からも、「気持ち悪い。」「頭、可怪しい。」と、毎日の様に言われた。其の時、「あ、僕って普通じゃ無いんだ。」と、分かった。そして、男なのに、同じ男の子じゃ無いと好きになれない事は、無闇に話して良い事じゃ無いんだと言う事も分かった。
同じ小学校だった子も、其の時は、面白がって言っていた様だが、中学に上がる頃には、すっかり忘れていて、中学校で言い触らされる何て事は無く、平和に過ごしていた。其れでも、何と無く、周りと馴染めずに居た。そんな時、僕に、声を掛けてくれた子が居た。
「何時も本読んでるけど、何読んでるの?」
「え…。」
「あ、いきなり話しかけてごめんね。俺さ、読書感想文がまだ書けてなくって、面白い本とかあったら、教えて欲しいなって。」
「……あ、其れなら、如何言うジャンルの本が好きか、教えてくれるかな?」
話し掛けて来た子は、優弦と言う名前だと言った。綺麗な黒髪に、白くて柔らかそうな肌。まつ毛が長く、大きな瞳は、綺麗な月白色をしていた。儚げに見えるが、意外と身長は高く、細いが、しっかりとした体をしている。儚さを纏っているが、芯の有る美しさに、気づけば見惚れてしまっていた。
其の会話が始まりで、よく話す様になり、やがて、呼び捨てで、名前を呼び合う様な仲になれた。
そして、気付けば優弦に惹かれていた。
でも、此の気持ちを伝える気は無い。言ったらきっと、優弦に距離を置かれてしまうだろう。そうなってしまうくらいなら、優弦の側に居られる今の儘で良い。
「璃舞って、モテるのに付き合ったりとかしないんだね。」
「あー、うん。」
「僕、恋愛対象が同性なんだよね。」
思わず口を滑らせて、自分が発した言葉で、自分で思考停止してしまった。
「え…マジ?」
嗚呼…。終わったな。絶対距離取られる。何、口滑らしてんだろ。何言ってんだろ。
小学校の時なんかよりも、比べ物にならない程の後悔が湧き上がってくる。
優弦に、距離置かれちゃうな……。
「や…、その……優弦…。」
「俺と…同じ……。」
「え…?」
返って来たのは、思ってもいない答えだった。初めてだった。自分を理解してくれる存在は。
優弦しか居ない。僕を分かってくれるのは。
優弦と付き合えた時は、本当に嬉しかった。今迄も、これからも、あれ程の嬉しい出来事は無いだろう。
僕には優弦しか居ない。
でも、優弦は、僕以外にも、沢山仲の良い人が居る。
僕には優弦しか居ないのに、優弦は、僕が居なくても大丈夫なんだと分かってしまった。だから、優弦にも僕だけが居れば良い。僕が居なくちゃ生きていけない様になって欲しいと思った。優弦が、僕だけしか見ない様になるなら、どんな方法でも良い。僕を、優弦に焼き付けて、どんな時でも、優弦が僕を忘れないように。
だから————。
「優弦。」
「ん?」
「優弦、好きだよ。」
「い、いきなりだな?!」
「お、俺も好きだよ…っ。」
そうだよね。優弦も僕の事好きなんだよね?
「え…っ…ちょ…っ?璃舞?何?」
「へ……?」
なら、良いよね?
僕は、優弦の手首を掴んで、床へ押し付けた。優弦の、シャツのボタンに指を掛けて、ボタンを外すと、優弦が、いきなり暴れ出した。
「璃舞!な、何すんだよ…ッ?!」
ボタンを全部外すと、服で隠れていた、優弦の白くて綺麗な肌が露出した。
「やめろッ!離せよッッ!」
「え〜?何でよ?」
此れで、優弦はきっと、僕の事が忘れられなくなるよね。
ずっと一緒に居てくれるよね。だって、好きって言ってくれたし。
「優弦…?」
そう思っていたのに、優弦は何処かへ行ってしまった。僕を置いて。
何も言わずに、静かに優弦は居なくなった。
優弦が居なくなってから、優弦の家族に、優弦が、何処に行ったのか聞いてみたが、優弦の家族も、何も知らされていないみたいだった。優弦が居なくなってからずっと、僕は、優弦を探し続けていた。優弦と話していた人を、僕は、全員憶えている。だから、片っ端から話を聞いて行った。そして、此処から遠く離れた大学に、優弦が、入学すると言っていたことが分かった。もう、受験には間に合わないから、二年生に上がるタイミングの、編入学試験を受けて、優弦の居る大学へ入る事を決めた。
如何しても優弦に会いたくて、暇を見つけては、優弦の行っている大学近くへ、足を運んでいた。何時も、優弦を探して歩き回っていた。中々見つからなかったが、遂に見つけたんだ。
優弦と言う名前が聞こえて来て、聞こえた方向に視線を向けた。マスクをしているが、月白色の瞳で、直ぐに優弦だと分かった。
「あれ?優弦?」
そう問いかけると、優弦は、肩を震わせた。
やっぱり、優弦だ!
そしてやっぱり、優弦は、僕が居なくても生きていけるんだね。
今度は逃がさないから。
優弦も、僕が居ないと生きていけなくなってよ。