工場跡に響く金属音と獣の唸り声。
蓮の黒狼が咆哮し、日哉に飛びかかる。だが——
「遅いねぇ!」
日哉は軽やかにステップを踏み、狼の牙をかわす。そして、躊躇なく刀を振るった。
シュッ!
狼の黒い毛が宙に舞う。
「クソッ…!」蓮が歯を食いしばる。「やべぇな、こいつ…」
「蓮、下がれ。」
結那が一歩前に出る。ナイフを構え、冷徹な目で日哉を見据えた。
「お姉さん、怖い顔しないでよ〜。」日哉はにこにこと笑いながらも、目だけはギラついていた。「そんな、俺…大好きだよ?」
「黙れ。」
結那はナイフを振るう。空間が切り裂かれたかのような速さ。だが日哉は笑みを崩さず、それを受け流す。
シャッ…シャッ…!
刃と刃が交錯する音が響く。日哉の刀捌きはまるで舞うようで、しかし狂気に満ちていた。
「ねぇねぇ、もっと本気見せてよ?」
「…後悔するな。」
結那の目が、氷のように冷たくなる。
次の瞬間——
バキィィィン!!
結那のナイフが、日哉の刀を弾き飛ばした。
「っ!?」
日哉の笑顔が一瞬、崩れる。
「動くな。」
結那はもう一本のナイフを喉元に突きつけていた。
「…やるじゃん。」
だが、その声とともに日哉の目がギラリと光る。
ザッ!!
「結那、離れろ!!」蓮が叫ぶ。
しかし日哉の動きは速かった。彼は刀を拾い上げると、結那のナイフを受け流し、反撃に出る。
ギィン!!
火花が散る。だが——
「…遅い。」
結那はナイフに氷の魔法を込めていた。日哉の刀は瞬時に凍りつき、動きが止まる。
「はぁぁっ!!」
そこに蓮の黒狼が飛び込んだ。巨大な牙が日哉の腕を狙う。
「くっ…!」
日哉は間一髪で飛び退く。だが、その笑みは深まるばかりだった。
「やっぱ…楽しいなぁ!」
「日哉…お前、何を企んでる?」蓮が低く問う。
「さぁね?」日哉は肩をすくめる。「でも、兄貴を殺すのは俺だよ?」
「そんなこと、させるか。」結那がナイフを構える。
「さて…どうかな?」日哉の目が、またギラつく。
そして、戦いはまだ終わらない——。
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