「兄貴を殺すのは俺だよ?」
その言葉を最後に、空気は張り詰めた。
ただ3人の呼吸音と狼の低い唸り声が響く。
結那はナイフを握り直し言った。
「冗談つまんねえぞ。」
「冗談じゃないよ?」日哉は髪をかきあげながら、刀を構えた。「兄貴のこと、俺がよく知ってるんだ。だから…殺すのも俺の役目でしょ?」
「…日哉、お前、何を抱えてる?」蓮が静かに問いかける。
「抱える?ははっ、俺は軽いよ〜。むしろ、兄貴の方が重いもの背負ってるんじゃない?」
蓮は歯を食いしばった。
「…あんた、本当に弟かよ。」
「さぁね。」日哉の目がギラつく。「確かめてみる?」
ザッ!
日哉の姿がかき消えた。
「速い——!」
次の瞬間、結那は反射的に身を沈めた。日哉の刀が、彼女をかすめる。
キィン!!
ナイフと刀が交差する。剣速は尋常じゃなかった。結那ですら、ギリギリで受け流している。
「やるねぇ、お弟子さん?」日哉が笑う。「でも、本気出さないと——」
「黙れ。」
結那のナイフが炎を纏った。赤く燃え上がる刃が、日哉を狙う。
ギィィィン!!
「おっと!」
日哉は飛び退く。しかし、その目は楽しげに輝いていた。
「いいねぇ…!もっとやろうよ、ねぇ、もっとさ!!」
「…狂ってる。」蓮が低く呟く。
「かもね?」日哉は笑った。「でもさ、俺は兄貴に認められたいんだ。だから…そのためなら何だってする。」
「…お前は認められたいだけ?」蓮が睨む。「それで兄貴を殺そうとしてんのか?」
「認められるには、超えなきゃダメだろ?」
「ふざけるな!!」
蓮の怒声と共に、黒狼が咆哮する。蓮の異能が解放された。
ドンッ!!
巨大な狼が日哉に襲いかかる。牙が迫る。しかし日哉は——「悪いけど、俺…世界一の殺し屋なんだわ。」
シュッ!
日哉は笑いながら、黒狼の喉元に刀を突きつけた。
「——動くなよ?」
蓮が息を呑む。だが——
「動け、蓮。」
結那の冷たい声が響いた。
「…は?」日哉が眉をひそめる。
その瞬間、黒狼の身体が氷に包まれた。そして、次の瞬間——
バキィィィン!!
氷が砕け、無数の氷の刃が日哉に向かって飛び散る。
「クソッ!!」
日哉は刀を振るって防ごうとするが、結那の追撃は容赦なかった。炎を纏ったナイフが、一直線に日哉の胸を狙う。
「まだまだ…!!」
日哉も笑いながら応戦する。だが、結那の攻撃速度はさらに加速していた。
「日哉…お前は、弱い。」結那が静かに告げる。「師匠を殺せる器じゃない。」
「…あぁ?」
その言葉に、日哉の目がギラついた。
「言ったな…?」
日哉の笑みが、次第に消えていく。
「なら…証明してやるよ。」
そして、戦場はさらに激化する——。