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結局、キミコ(狐の巫女)はトマトジュースを飲むまで俺を追尾していた。多重人格って思った以上に厄介なんだなーと実感した。
その後、俺はいつものように朝ごはんを食べ始めた。
「……ん?」
誰かは分からないが、誰かが俺を呼んでいるような気がした。いや、違う。呼んでいるのではない。呼ばれているのだ。しかし、それが誰なのかはこれっぽっちも分からない。
「ナオト、どうしたの? ちょっと味濃かった?」
ミノリ(吸血鬼)が俺の顔を見ながらそう言う。ここにいる誰よりも早く俺の異変に気づいたミノリ。こいつ、俺よりも俺のこと分かってるな。俺はそんなことを考えながらそれを否定した。
「いや、別に」
「じゃあ、どうして手が止まってるの?」
「あー、えーっと、ちょっと考え事をしててな」
「どんなこと?」
「え? あー、えーっと、どうして何もしてなくてもお腹空くのかなーって」
「二十四時間三百六十五日、体は休まず働いてる。だから、お腹が空《す》くのよ」
「いや、それはまあ、そうなんだけど」
「あんた、何か隠し事してない?」
「いや、別に」
「本当?」
「ほ、本当だよ」
「怪しいわねー」
彼女はジト目で俺の目を凝視し始める。はぁ……俺って本当に嘘つくの下手だよなー。
「あー、えー、その……隠し事あります」
「やっぱりね、怪しいと思ったのよ。で? その内容は?」
「あー、えーっと、な、なんか誰かに呼ばれてる気がするんだよ。まあ、気のせいかもしれないけどなー。はははは」
俺が苦笑しながらそう言うとミノリ(吸血鬼)は真剣な表情になった。彼女だけではない。皆、ほぼ同時に食べるのをやめて彼女と同じ表情を浮かべた。
「あ、あれ? みんなどうしたんだ? 急に真剣な表情になって」
「ナオト、それいつから?」
「え? あー、えーっと、朝ごはんを食べ始めた時からだけど」
「そう。まあ、一応今日から交代であんたの護衛をするからあんたは何か分かったらすぐにこの家の誰かにそのことを伝えなさい。いいわね?」
「あ、ああ、分かった」
な、なんだか大ごとになりそうな気がするなー。