第9話（最終話）：「告白ノ間」

1週間後

あの日の配信以降、チャンネル「#真相をお話します」は突然、全動画が削除され、運営者の痕跡も消えた。

山本蓮は精神鑑定の結果、刑事責任を問われることはなかった。

それでも、彼の言葉と笑みは、未だに蒼の中で色濃く残っていた。

蒼は警備員の仕事を辞めた。

そして、凛と共に、少しずつ新しい日々を歩き始めていた。

そんなある日、凛のスマートフォンに通知が届く。

送信者不明

「次のスピーカーは、あなたです」

添付されていたのは、狐の面を被った男が手を広げているGIF画像。

背景は暗い地下室のようで、どこか既視感がある。

凛は画面を見つめながら、ぽつりとつぶやく。

「……終わってないんだ」

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深夜 2:00

凛は一人、PCを開いた。

URLが一つ、送られていた。開くと、見覚えのある配信ページが出現する。

【#真相をお話します：REBOOT】

「再開された……？ 蓮は捕まったはず……じゃあ、誰が……？」

そこにチャットが表示される。

🦊【狐火】：ようこそ。あなたの“真相”を、話す準備はできましたか？

凛は怯えながらも、キーボードに手を伸ばした。

（私は、話すべきなの？ ……でも、私には“真相”なんて……）

けれど、彼女の脳裏には、蒼が語った“裏切りの夜”の記憶が蘇る。

あの夜、実は凛も――事件の現場近くにいた。

見てしまったのだ。

蒼が、血まみれの友人・悠斗の前で立ち尽くしていたところを。

（私は、黙っていた。蒼さんを……見逃した。自分が怖かったから）

涙が頬を伝う。

🦊【狐火】：“真相”は、いつも一人じゃない。

では、スピーカー、マイクをどうぞ。

その瞬間、PCの画面が真っ白になる。

音声だけが、ネットの海へと流れていく――

「これは、三年前、私の目の前で起きた、ある“選択”の話です……」

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数日後

ネット上で再び噂され始める。

「告白ノ間」が復活した

今度のスピーカーは“女性”だ

しかも、過去に登場した人物に関係があるらしい――

そして、もう一つ、匿名掲示板に投稿された謎の書き込み。

【告白の部屋】

次のスピーカー候補一覧（抜粋）

・小林紗季（主婦・失踪した娘の真相）

・加藤花音（パパ活女子の裏にある実験）

・渡辺陸（娘を救うための“最後の手段”）

・斎藤海翔（暴力団内で消えた金の行方）

・中村颯太（元チャンネル管理人、“狐火”の正体？）

そこに書かれていた最後の一文。

「スピーカーは、あなたかもしれない」