コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「金本、頼むなぁ。なんといっても、本社から降りてきた案件だからなぁ。なんとかせなならん。」「はい。なんとか。」
帰りの新幹線の中。週中だ。ビジネスマンばかりにみえた。
あの後、本社に寄って、本来、担当するはずだった広報部第2グループで話をきいた。うちは、東京本社と名古屋、関西(大阪)、福岡に支局がある。業界では、そこそこ大手だ。東京は広報部が、第1、2、経理の3グループにわかれている。制作担当の第1、2、そして経理。
急に名古屋支社に任された仕事。だいたいの訳はきいていたが、第2の子が急にやめたらしい。営業部がとってきた仕事、その中で、担当が急に変わっても事情を察し、快諾してくれそうなのが、株式会社|T-rooms 《ティールームズ》だったとのこと。T-roomsとは互いに前社長だったときからの付き合いだときいたことがある。
「悪いなぁ、虎子さん。」
「いやいや、仕事まわしてもらえるのは、ありがたいですから。東京は何本も大きいの抱えてるからねぇ。」
「あ、えーと…」
「あ、この子はアートチーフの…」
「金本です。金本すみれ、です。」
「金本…もしかして…きみは…」
「そうですよ。あれは、いい意味で、驚かされましたからねぇ」
「ハッハッハッ笑 我々世代には、たしかにね 笑」
「そんなに突拍子もなかったですか?」
「いやいや、なかなか誰もやらなかった発想だったねぇ」
2人が笑っているのは、きっと、採用受験者向けに配る会社案内だ。制作は、4社が順にまわしている。昨年度は名古屋支局が担当した。
私は広報部のマネージャーに声をかけてもらい同僚の渡辺と共同制作した。2人で話し合っていくうちに、冊子なんか貰っても今時見ないよねーって話から、配るのはやめて、細かな紹介や先輩からのメッセージなんかを動画編集しSNS上に挙げた。
どこの会社でもしていることだと思って始めたら、意外と、会社案内はいまだに冊子化してるか、冊子·SNSの両方で作っていた。1本に絞ったのは珍しかったらしく、一時、社内で話題になった。また、これが経費削減にも貢献しただとかで、支局長から直々に、お褒めの言葉をいただいた。
そのことがあってか、私は27歳にしてアートチーフに昇格し、渡辺は関西支社へ栄転した。