コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
10月14日、王城の南翼にある広大な訓練場。月明が石畳に鋭い影を落とし、冷たい夜風が戦場のような緊張感を運んでいた。
その中央に立つ二人──かつて親友となった剣豪、レイス・ワイルと闇夜異魚天。
「久しぶりだな、異魚天。」
レイスはゆっくりと愛用の細剣を抜き、月光を反射させた。
異魚天は豪快に笑い、肩にかけた大太刀を担ぐ。
「おう、レイス! こんな夜更けに何の用だ?」
レイスは微かに笑いながら、鋭い目を向ける。
「お前がどう動くか、確かめに来た。」
「……ほう?」
異魚天の笑顔が、わずかに薄れる。
レイスは言葉を続けた。
「お前も知っているだろう? 王城の中で何が起きているか。」
「王国軍の掌握、異端審問官の粛清、新王の即位計画……そして、10月31日にはすべてが終わる。」
異魚天は口笛を吹いた。
「ずいぶんと大掛かりなことをやってるみたいだな。」
「お前はどちらにつく?」
レイスの問いに、異魚天は腕を組んでしばらく考え込んだ。
「アレクシスの計画は悪くねえ……だが、つまんねえな。」
レイスは目を細める。
「つまらない?」
「そうさ。俺はな、権力闘争なんざ興味ねぇ。強ぇ奴と戦って、うまい酒を飲めりゃ、それでいいんだよ。」
レイスは沈黙した後、静かに剣を構えた。
「なら、試させてもらう。」
異魚天は驚いたように目を見開き、すぐに笑う。
「へぇ……やっぱり、そうなるか!」
彼もまた、腰の大太刀をゆっくりと抜く。
「久々にお前とやるのも悪くねえ……!」
そして、次の瞬間。
二人の剣が交差した。
キィン!!
鋼が鋼を弾き、火花が夜の闇を裂く。
レイスは素早い刺突を繰り出し、異魚天は紙一重でそれを回避しながら斬り上げる。
異魚天の剣撃は重く、速く、正確だった。だが、レイスの剣はそれ以上に鋭く、まるで風のようにしなやかだった。
「相変わらずだな、レイス!」
「お前もな、異魚天。」
互いに斬り合いながらも、二人の目には喜びが宿っていた。
だが、異魚天はふと動きを止め、剣を下ろした。
「悪いが、俺はアレクシスの側につくつもりはねえ。」
レイスもまた、剣を収める。
「……そうか。」
「けどな、もしお前が本気で止めるってんなら、その時はお前の敵になってやるよ。」
異魚天はニッと笑い、肩を叩く。
「それまでは、酒でも飲みながら待っててやるさ。」
レイスはその言葉を噛み締めるように聞き、静かに頷いた。
そして、月が高く昇る中、二人は再び別々の道を歩き始めた。