現れたのは、一人の男だった。
アレクシスの異能により呼び出された魔族の中で、ひときわ異質な存在。
「……父?」
レイスは目を見開いた。
そこに立つのは、記憶の奥底でしか知らないはずの人物──レイスの父、アザルだった。
男は漆黒の外套を纏い、レイスを見つめる。その瞳には、どこか人間のような温もりと、魔族特有の狂気が宿っていた。
「……やあ、レイス。」
レイスの血が沸騰するように脈打つ。
「……お前は死んだはずだ。」
アザルは淡々と答えた。
「死んださ。お前が俺を討ったのだからな。」
レイスは息を呑む。
──かつて、レイスは自らの手で父を殺した。
それなのに、今目の前にいる。
「どういうことだ……?」
アレクシスが愉快そうに笑う。
「簡単な話だよ、レイス。君の父は、封印されたに過ぎなかった。」
「なに……?」
「100年前、我が祖父は封印された存在をも引きずり出した。それが……君の父、アザルというわけだ。」
レイスの拳が震える。
(まさか、こいつを……もう一度相手にしなきゃならないのか……?)
アザルは静かに微笑んだ。
「さて、もう一度決着をつけるとしようか、息子よ。」
レイスの喉が渇く。
──この戦いが、レイスにとって最も残酷な戦いになることを、彼自身が誰よりも理解していた。
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