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放課後、教室に戻る途中の拓実は、偶然窓越しに純喜と学校一の美女・松岡茜が向かい合っているのを目にした。
茜は学年トップの美貌と明るい性格で、男女問わず人気者。
拓実もその存在を知らないはずがなかった。
「純喜くん、ずっと言いたかったんだけど……」
茜の表情は真剣そのもの。
拓実は物陰に隠れ、二人の様子をこっそり窺う。
「私、純喜くんのことが好き。もし良かったら、付き合ってほしい」
その瞬間、拓実の心臓は嫌な音を立てて落ちていくような気がした。
(……やっぱり、純喜くんみたいな人には松岡さんみたいな子が似合うんやろな)
それ以来、拓実は純喜と距離を取るようになった。
教室で純喜が話しかけても、適当な理由をつけてそっけなく返事をする。
「なあ、拓実。今日放課後どっか行こうや」
「……ごめん、用事ある」
今までは当たり前のように一緒にいたのに、拓実の態度は明らかに変わった。
(これ以上、一緒におったら辛くなるだけや)
純喜が茜と付き合うことになったら、自分はどうしていいかわからない。
そんな拓実の様子に、純喜は焦りを感じていた。
「拓実、最近俺のこと避けてない?」
「……別に。なんでそんなこと思うん?」
「いや、なんか冷たいっていうか、前と違うやん」
純喜が追及しようとしても、拓実は「なんでもない」の一点張りで誤魔化す。
ある日、拓実が教室を出た隙に、クラスメイトの話を耳にする純喜。
「茜さん、この前純喜に告白したんやってな」
「え、そうなん?じゃあ付き合うんかな?」
その瞬間、純喜は全てを理解した。
(……拓実、これが原因なんか)
放課後、純喜は無理やり拓実を呼び止めた。
「話あるから、来て」
「……別に聞きたくない」
「ええから来いや!」
無理やり連れ出された屋上。
拓実は俯いたまま、純喜と目を合わせようとしない。
「お前、俺と茜さんの話聞いてたやろ?」
「……聞いてへん」
「ウソつくなや。お前がそんなんで隠せるわけないやろ」
その言葉に、拓実は肩を震わせる。
「そりゃ、松岡さんの方がええやん……俺なんかより」
ぽつりと呟いた拓実の声に、純喜は思わず抱きしめた。
「俺が選ぶんは、お前や」
「……なんで?」
「お前がどんだけ自分を下に見とっても、俺にとっては一番やから。茜さんにはちゃんと断ったし、俺の気持ちは拓実にしか向いとらん」
その真剣な言葉に、拓実の目からぽろりと涙がこぼれる。
「……ほんまに?」
「ほんまや。拓実やって俺と一緒におるの、嫌やないやろ?」
拓実は小さく頷き、純喜の胸に顔を埋めた。
「……嫌やない」