いちきたです
not本編軸
一話完結型
結構ラブラブ(当社比)
ブツ切り
「さみー」
辺りは煌めく色とりどりのLEDで着飾り、吐く息も白く可視化されるような寒さだ。
今日は人と会う約束をしたはずなのに、今日に限って、誘ってきた当の本人は遅刻のようで…
にしても今日は目に見えて人が多い。
この人混みの中でも俺が見つけられるのか、昔読んだ物探し系の絵本を思い出しながら、寒さにこの身を抱擁されつつ待った。
「待った?」
「…遅せぇよ。」
「はは、本当は嬉しいんだろ?」
「ふん」
寒さにまだ引っ付かれる中遅刻してきたヤツとガキ臭い手繋ぎをしながら明るい街の中に入り込んだ
「何食べるか決まった?」
………?
…………………
………………………あ
聞かれて寒さが一段と悪化したような気がした。『まずい、 忘れてた、考えてねぇ。』と正直に言うのも恥ずかしい、が言葉を返さなければ相手がどんな人間だろうと不安になる。
「もしもーし?大丈夫?」
………
「俺はだな……やっぱ寿司か、はまち好き。」
「それ前にも聞いたぞ、ネタ切れか?」
「そう?」
いつも通りで一周回って安心する。
危機が去って心做しか寒さもだいぶ弱まってきている気がする
食べたいものも思いついた。
「 てか、俺はケーキとか持って帰って家で食いてぇんだけど」
「んー、じゃ寿司は持ち帰りのがいいか。」
「寿司とケーキって合わなくないか」
「回転寿司屋にケーキなんて当然のようにメニューにいるだろ?そういうもんさ。」
「…ケーキの種類にもよるだろ」
「それでも俺は折れないけどな、絶対に負けない人間だからな。」
「さみージョーク言ってんじゃねぇよ、寿司の後にケーキ食って味合わないっつって、文句垂れても受け付けねぇからな。」
「従うよ 洟垂れ小僧に 言われたら」
「その洟垂れ小僧呼びやめろ」
「はいはい」
一条と歩きながら影と一緒の黄色い道に少しだけ道案内されながら今食いたいもの、欲しいもの、行きたい場所を言い合いながら、この日だけの空気感を浴びた。
クソデカクリスマスツリーに、階段の側面に描かれたサンタの絵、年明けがもうすぐなのを伝える百均、ゲームを買って欲しいが故に暴れる子供…
この季節は長い目で見れば最悪かもしれないが、一つ一つの小さく、季節を作っているものを見た上だと最悪とは言えない。
「俺以上にい男でも見つけちゃった?」
「お前って本当に雰囲気壊すの得意だよな」
「壊したつもり全然なかったんだけどなあ。」
…黙ってた方がいい男だよ、バーカ。
「やっぱ俺って世界一の男前だよな〜」
「こっちチラチラ見んな」
恥ずかしい、なんでこんなのと手繋ぎながらラブラブカップルの振りなんかしてるんだ。
カップルなのは間違って……ない、けど
「照れちゃって、かーわい」
ひとごみのなかでもおかまいなしにきすしやがって。
離れられない、幸せすぎる。
「……ケーキ崩れちまうから早く帰ろうぜ」
「あいあいさー」
コメント
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北ちゃんは素直じゃないしツンデレなのは全国共通でございますわ 尊い。死ぬ