コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
かつてのアンパンマンは、愛と勇気を胸に、人々を助けるヒーローだった。
しかし、今の彼にとって、それはもはや虚しい言葉でしかなかった。
「……愛も勇気も、何の役にも立たなかった。」
黒く染まった顔に深い影を落としながら、アンパンマン――いや、ダークアンパンマンは呟く。
目の前には、倒れ伏したばいきんまんがいた。
「あ、ア…アンパンマン……?」
ばいきんまんは震える声で呟く。
いや、目の前に立つその存在は、彼の知るアンパンマンではなかった。
「おまえは今まで、何度も僕に挑んできたな」
低く、冷たい声。
かつての優しさは、もうどこにもない。
「いつも僕はおまえを許してきた。何度倒しても、おまえは立ち上がり、また悪さをして……でも、そんなのも、もう終わりだ」
黒いオーラが彼の拳に集まり始める。
「アンパンチ……いや、これは “ダーク・アンパンチ” だ」
ゴッ……!!!
黒い衝撃波が炸裂し、ばいきんまんの体が吹き飛ぶ。
今までのアンパンチとは比べものにならない破壊力。
岩が砕け、地面が裂ける。
「がはっ……!!」
ばいきんまんは地面に倒れ込み、動けなくなった。
ドキンちゃんとホラーマンが駆け寄るが、彼らもダークアンパンマンの圧倒的な力の前では何もできない。
「ま、待って!アンパンマン!お願いだからやめて!!」
ドキンちゃんの叫びにも、ダークアンパンマンは見向きもしなかった。
「僕の名前を呼ぶな……僕はもう、アンパンマンじゃない」
その時、遠くから声が聞こえた。
「アンパンマン!」
振り返ると、そこにはカレーパンマンとしょくぱんまんが立っていた。
「おまえ、何をしてるんだ!? ばいきんまんを倒して、それで満足なのかよ!」
「目を覚ませ、アンパンマン!おまえはみんなのヒーローだったはずだ!」
二人の言葉に、ダークアンパンマンは一瞬だけ沈黙した。
「……ヒーロー?」
彼はゆっくりと二人を見つめる。
「愛と勇気を信じて、仲間と一緒に戦うヒーロー……」
「そうだ!おまえは決して諦めない、優しいヒーローだ!」
カレーパンマンが必死に説得する。
しかし――
「はは……ははははは!!」
ダークアンパンマンは、ゆっくりと笑い始めた。
「ヒーロー? 愛と勇気? そんなもの、何の意味もなかった……!」
「な……?」
「僕は “愛” にすがった。でも、仲間を守れなかった……」
「僕は “勇気” を振り絞った。でも、敵に勝てなかった……」
「ジャムおじさんも、バタコさんも、チーズも……死んだんだ!!」
ダークアンパンマンの声が空に響く。
「おまえらに……僕の気持ちがわかるか……!?」
黒い稲妻が彼の周囲を走る。
「もう、僕には “愛も勇気も” 必要ない……」
「そして……おまえらも、もう “友達” じゃない」
「これ以上、僕の邪魔をするなら……おまえたちも消す」
ダークアンパンマンは、ゆっくりと拳を握る。
カレーパンマンとしょくぱんまんが戦闘態勢に入る。
「くっ……どうやら、やるしかなさそうだな」
「仕方ない……アンパンマンを止めるぞ!」
――かつての仲間同士の戦いが、今始まる。
「さあ、絶望を見せてやるよ……!」
つづく。