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「えーと…何があったの…?」全身ビシャビシャの白菊と小林に腹筋がつって死んでいる中山と中山におぶられながらすやすや寝ている木内と大笑いしながら帰ってきた池田に困惑している黒井。
とりあえず、白菊と小林を風呂に連れて行って木内を優しく起こし、中山は放って池田に状況を説明してもらうことにした。
「…ってことなんです」
「んでその海に落ちたジャージは?」
「結局流されていきました」
「白菊あの子まさか何でも屋のジャージ落としてないよね…?」
何でも屋のジャージの中には襲われた時用の銃や小型インカム、何でも屋専用食料などそれはそれはものすごく必要なものがぎっしり入っているジャージである。そう、それを落とせば白菊からMEAへとの連絡は取れない。白菊は何でも屋唯一の戦力なのでインカムが壊れてしまったり無くしてしまったら…終わりだ。
「…風呂から上がったら聞きましょう」
小林は銭湯のように広い湯船に浸かりながら、今日1日の疲れを癒していた。
「はぁぁ〜…沁みる〜…」
なんだか、おばさんみたいなことを言っている気がする。
(それにしても、男女で別れてるのは嬉しい…)
てっきり、一つのお風呂にシラギさんと入るのかと…
その時、出入り口の方からガラガラと扉の開く音が聞こえた。
「えっ」
「あ、先いましたか。」
入ってくる白菊に動揺を隠せない。この人、男じゃなかったの!?
「俺のこと男だと思ってますよね?」
シャワーし終え、湯船の中に入って行く白菊が見透かしたように小林の心を読んだ。
「そうデス…」
「ですよねぇ〜。俺性別変えれるんで、別に気にしないでもらって」
「え」
何かすごいことを言われた気がする。ぶっ込んできたよねこの人!?
「俺、バケモノ喰ってから体の中いじれるようになったんで、ホルモンとか。結構楽しいっすよ」
楽しいって何だっけ。
ニカッと太陽のような笑顔で言われても困ることをさらっと言われる。何この人??
「体の中変えれるんで小林さんの細胞ちょぉ〜っとくれれば小林さんと同じ体にもなれますよ」
ワキワキと指を動かしながら小林の腕を触ってくる。
…何故この人はそんな体にされて、笑っていられるのだろうか。何故、その体を受け入れれたのか。なんで、そんなに悲しさを隠すように笑うのか。
その顔で全てを汲み取ったのか、一瞬悲しい顔をしながら、昔の話を教えてくれた。
「俺はバケモノに家族を殺されました。まあ、MEAにいるほとんどの人がそうですけど」
白菊はどこか一点を見ながらぼーっと、まるでみた夢を教えてくれるように話した。
「最後、俺が一人残ったんです。んでその殺し方が残酷で。」
声が少し震えた。
「手足を引きちぎって、胴体を…ねじ、曲げて…最後は……全部、喰われるんです。」
声が震えながら目を閉じてゆっくりと話してくれた。もしかしたらそこには家族の血だけがあったのだろう。バケモノに襲われたニンゲンは、大体残るのは血のみ。それも、掃除されて残らない。何も残らない。家も、証拠隠滅のため燃やされ家族のものは持ち出せない。文字通り何も残らない。
その光景を、苦痛を、絶望を全部思い出したのだろう。
「…んまぁ、手足を喰われた時、ハンターさん達に助けられたんすけどねぇ〜。そん時に池田さんと出会って〜、『死にたくねぇなら血を飲め!!』つって飲みましたね。死にたくなかったんで」
フラットに言うが、実際はもう霞んで目が見えないながらも必死に血を飲んだんだろうとその光景を思い浮かべる。自分の目から水が出ていることに気づいて慌てて涙を隠す。いつの間にか泣いていた。痛いほどよくわかるその苦痛が琉夏の心にも深く刺さっていった。あの苦痛は忘れてはならないものだと。あの悲しみの連鎖は生ませないこと。忘れていた決意を呼び戻すことができた。
「先出ますねぇ、ふにゃふにゃになってきましたぁ」
千鳥足で出入り口まで目指す白菊。
「あの!」
「なんすか?」
「私も、がんばります!」
一言言いたかった。この言葉は悲しみの連鎖を生ませない刃になるから。
「なら、俺らもやる気出さないとっすね」
この言葉で元気が出たのか、次は本当の満面の笑みで白菊は風呂場から出て行った。白菊が出て行った後、ぴちゃんと琉夏の頬から一雫が落ちた。堪えていた何かが全部出てきたのだろうか。今更遅いというのに。もう過去には戻れないから。過去の決断はやはりルカを苦しめる。ルカは腕で涙を拭き、上がろうとした時、ふと鏡を見ると目が充血していることに気がついた。なんでだろう。というか、目が赤色一色に染まっている。何かあるのだろうか。風呂に長居しすぎたせいか頭もぼーっとしてきた。意識が朦朧と…