ズシャアッ!!!
大地を割るような斬撃が放たれた。
闇夜異魚天の刀がレイス・ワイルの血の触手を切り裂き、地面に深い傷を刻む。
「チッ……!」
レイスはすぐさま距離を取った。
異魚天は不敵に笑いながら、刀の血を振り払う。
「どうした? まだまだこれからだろ?」
しかし、その時だった。
「──全軍、撤退せよ!!」
夜の帳を裂くような命令が響き渡った。
異魚天が振り返ると、吸血鬼討伐軍の将校が血まみれで指揮を執っていた。
「撤退だと……?」異魚天は眉をひそめる。
「何を言ってやがる、こっからが本番だろうが!」
「……いや、無理だ。」
ヴァレン・クローヴィスが冷静に状況を分析していた。
「想定していた以上に強力すぎる。このまま戦い続ければ、我々の損耗が大きすぎる。」
吸血鬼討伐軍の兵士たちは、すでに疲弊していた。
「クソッ……!」異魚天は舌打ちし、レイスを睨みつける。
「まぁいい。今日のところは見逃してやる。」
「ほう?」レイスは興味深げに微笑んだ。「これは恩義に感じるべきかな?」
「勝ち誇ってんじゃねぇ。次は本気で斬る。」
異魚天は刀を鞘に納め、吸血鬼討伐軍の後方へと退いた。
ヴァレンが短く指示を出す。
「撤退戦を開始する! 余計な戦闘は避けろ!」
レイスはその光景を静かに見つめながら、呟いた。
「……これで終わりではない、か。」
森の奥へと吸血鬼討伐軍が撤退していく。
夜の闇が、再び沈黙を取り戻した。
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