コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
王国南部のケンドラ城塞は、かつての栄光を残しつつも、今では死と破壊が漂う静かな場所だ。異魚天とレイスが再びその地で出会う運命を迎えるとは、誰も予想しなかった。
城塞の上空、黒雲が立ち込める中、異魚天は剣を肩に担いで歩いていた。
「……ここか。」
彼は目の前に立つ城塞を見上げる。
その瞬間、足音が響き、闇の中から現れたのは――
「レイス・ワイル……。」
異魚天の声が響くと、レイスが闇の中から姿を現す。
「異魚天か。」
その瞳は変わらぬ冷徹さを持ちつつ、どこか懐かしさを秘めていた。
「久しぶりだな、元気か?」異魚天が笑みを浮かべる。
「お前も相変わらずだな。」レイスは短く返すと、しばらく黙って立ち尽くす。
「こんな場所でまた会うとはな……。」異魚天が言った。「だが、戦わなければならないのか?」
レイスは無言でその場に立つ。
「……まあ、そうだろうな。」異魚天が肩をすくめる。「お前が敵でということは、俺もわかってる。」
「俺の目的はただ一つ。王国を変えることだ。」レイスは冷静に語る。「だが、お前は何だ? 俺を倒して、そして……何を得るんだ?」
異魚天は短く笑うと、刀を抜き放った。
「俺はただ、戦いたかっただけだ。お前も同じだろ?」
レイスはその言葉を静かに聞き、そして一歩踏み出す。
「ならば、戦おう。」
その言葉と同時に、二人は一斉に動き出す。
シュン!!
異魚天の刀が斬り下ろされ、レイスはそれを冷徹な反応で受け止める。
「速いな……。」レイスは微笑む。
「お前もな。」異魚天はそれを返し、再び刀を振るう。
だが、どこかで戦いの意味が変わり始めていた。
互いに譲らず、戦いながらもどこか懐かしさが漂っていた。だがその戦いの中で――
「お前の力、悪くないな。」異魚天は一度止まると、改めてその瞳に訴えかける。
レイスは刀を振るいながらも、その言葉に何かを感じ取ったようだった。
「お前も……そうだな。」
その一瞬、戦いが止まる。
「なあ、異魚天。」レイスがふと口を開いた。「俺たちは、戦うためだけに生きてきたのか?」
異魚天は少し考え、そして答える。
「いや……戦うために生きてきたんじゃない。」
「じゃあ?」
「戦ってきたからこそ、今、何を守るべきかが見えてきた。」異魚天は穏やかに言う。
レイスはその言葉を噛み締めるように聞いた。
「それなら、俺も……。」
二人は再び剣を交えた。だがその剣筋に、もう殺意はなかった。
やがて、戦いが終わりを迎えると、異魚天とレイスは互いに剣を下ろし、並んで立つ。
「お前……まだ強くなれるな。」異魚天が微笑む。
「お前もな。」レイスが笑顔を浮かべる。
その瞬間、互いに理解した。
自分たちが戦ってきた理由、そして戦いの果てに辿り着くべきもの。
「俺たち、もう一度戦う時が来るかもしれないな。」
「その時は……一緒に戦うか?」
「……ああ。」
異魚天とレイスは、初めての真の友となった。
過去のすべてが繋がり、そして未来へと続く。
その日、二人は本当の意味で戦いを終えた。