「お、なるちゃーん。こんばんはぁ」
時刻は深夜2時、彼は出ると言われている廃墟のビルの前でブンブン手を振っていた
ムードもクソもない
しかし本当に出るのか…?
そう思いながらも彼と合流する
「結構遅い時間なんですね」
「なんかあるじゃーん?丑三つ時ってやつ 」
「あぁ、なるほど」
この人なりに気遣った結果らしい
この人がいなかったら最高の雰囲気だっただろうに
と少し雲さんに同情してしまった
雲さん仮だけど
「それじゃ、行きますか」
「あ、待って待って!」
階段を登ろうとした時、彼が急に引き止める
「なんですか?」
「一応本当に出たら怖いから!」
そう言って塩を渡してくる
うわぁ、意外とこうゆうの信じちゃうタイプなのか
「もしかして、怖いんですか?」
そう言うと肩がびくりと跳ねる
どうやら図星のようだ
彼はもしかして幽霊騒動の全部が建前で要は自分が怖いから一緒に行ってくれる人を探していただけでは?
少し笑ってしまう
こんなに強いひとなのにお化けには弱いのか
「…ノセさんが先頭行きますか?」
「え、遠慮しときます…」
初めて彼のカタコトの日本語と敬語を聞いた瞬間だった
「ふふ」
思わず笑ってしまった
「何笑ってるのー?カイトちゃん?♡」
あ、やばい
このままふざけていると帰りに殺される
彼の殺気だった目を見てそう悟ってしまった
「先頭、俺、行きますね」
次は俺がカタコトになる番だった
絶対お化けよりこの人の方が怖い
「特に何も無いですね」
1階から2階までかけて全ての部屋を回ったが特に何も無かった
今は3階にいるがそこももう少しで終わりそうだ
結局噂は事実じゃなかったということか
デマを流されて裏世界の人達が勝手に不安になっただけ
だってそうだろう
お化けにしろ人の仕業にしろ彼を殺した張本人であるノセさんが来て放っておくというのはまず有り得ない
「ここが最後の部屋ですか」
そう言ってスマホのライトで照らす。 そこには応接間と書いてあった
「あ、」
とノセさんがポロリと言葉をこぼす
「どうしたんですか?」
「避けろ!」
急に彼は俺の胸ぐらをつかみ後ろに引き、俺は勢い余って壁にぶつかった
「なに、やるんですか」
痛みに堪えながら前を向くとノセさんの体が宙に浮いていた
いや、首元を掴まれているんだ
「ころ、した?おまえ、ころす?」
「あはは。お久しぶりじゃないですか」
「雲さん」
乾いた笑いを零しながら彼はそう言った
つまりこいつが東雲…?
格好は黒いマントに覆われて、顔は見えない
いや、傷が大量に付けられていて原型が留められていないんだ
目は潰され口は縫われている
「僕のセンス気に入って、くれましたかね?わざわざ殺した場所で待ってくれて、ありがとうご、ざいます」
そう言うと一層力が強くなった
「のせさん!!」
必死になって刀を持って切りかかる
狙うは手!
彼が捕まっている手ごと切り落とした
そして、咳き込んでいる彼を抱えて逃げる
「ノセさん大丈夫ですか?」
「…」
目が虚ろで焦点が合わない
そんなに強い力で掴まれていたのか
痛みでうずくまっている雲さんを置いて階段を必死に下がり出口まで着いた
はずだった
「空いてない…?」
嘘だろ
さっき俺たちはここから入ったはずなのに何で閉まってるんだ
後ろからやつが近づいてくるのを感じた
「なぁ、そいつが、何したかしっ、てるか?」
カタコトの日本語
いやというか上手く喋れていないように感じる
お化けとやらには呼吸器官が上手く作動しないのか?
そう聞きたくなるレベルだ
「知ってます、あなたを殺したんですよね」
「そう、だ。それだ、けじゃない、目も、口も、耳も、顔も、ぜん、ぶ奪われた」
「なぁ、おれの顔、みえる、か?」
ライトに当たった彼の顔を見て思わず鳥肌が立った
さっき俺は傷だらけだと思った
だが違った
顔の皮が剥がれているんだ
「うっ」
吐き気まで込み上げてしまう
その衝動でノセさんを地面に下ろして胃の内容物を吐き出す
「俺は、此奴を殺す、そして、かおをう、ばう」
そう言ってノセさんに手を近ずける
「ダメ、です」
「ノセさんはいい人じゃないけど、俺は、この人がいないと死ぬから、だから、ダメです」
「おま、え、こいつの、弟子、カ?」
「ある意味そうかもしれませんね」
彼はこっちを見てニヤリと笑ったような気がした
「なら、おまえを、ころ、してこいつを、ころ、す」
「それな、らみんな、しあわせだ」
「やってみて下さい、やれるもんなら!」
隠していた銃を取り出しこめかみに銃弾をぶち込む
「う、ぁ、」
相手が苦しんでいる間に間合いまで入り込み刀で切り刻む
そうすると言葉にならないような雄叫びのような悲鳴を叫んだ後ばたりと倒れた
「やった、か?」
「ふは」
「ふはははは」
死体になったはずの彼から笑い声が聞こえる
そして何も無かったのようにゆっくりと起き上がってきた
「ッ」
嘘だろ?
「こんな、ものか?弟子よ、ノセ、は、もっと強かっ、たぞ」
そう言った瞬間だった
気づいたら彼は目の前に来ていて一瞬で俺を切り刻んだ
「あ”」
痛い、痛い痛い痛い
大量の血が至る所から流れる
呼吸するのですら一苦労だ
戦わなければ…
銃で、また、こめかみを…
彼はゆっくり近ずいて俺を押し倒す
「っは!」
痛い、
倒れただけなのに、
「んー、あいつ、が、やったよ、うに指を、1本、づつ切り、落とすか 」
俺が使っていた刀を持って彼は俺の手を持ち上げる
「いい、悲鳴、きか、せろ、よ?」
ここまでか
これから俺は意味の無い拷問をされ死ぬのだろう
今より何十倍も痛い思いをしながら
死んでいくんだろう
…
いや、まだ、まだ死にたくない
俺はまだ、まだ生きたい
生きて生きて生き抜くんだ
近くにあった銃を掴み
「お前が、死ね」
相手の頭を貫く
そして雲さんを押しのけ離れる
「はぁはぁはぁ、」
この行動だけでも呼吸が荒くなる
視界がクラクラする
失血死しそうだ…
包帯とかで止めないと、
「いた、いじゃ、ないか」
そう聞こえたと思ったら彼はまた立ち上がる
勝てない、
彼は不死身なのか?何をやっても攻撃が通らない
またゆっくりこっちに近ずいてくる
どうする?弾はまだある
刀は相手の手の中
どこを当てればいい、
どうしたらいいんだ
「し、ね、」
彼が目の前で刀を振り下ろす
あ、やばい、
しぬ!
そう覚悟した瞬間だった
「2回も僕に殺されるなんて可哀想でなりません」
ノセさんが彼の頭を切り落とした
「なるちゃんにいいこと教えてあげよう。攻撃したところをよく見ることだね」
「君が切り落とした彼の手は再生とかくっついたりしなかった他のところは回復するのに」
「つまり体から離れたところは回復しないんだ」
「のせ、さん」
「あとはー」
やばいクラクラする
視界が狭まる
何かを話しているのはわかるけど声が聞こえない
のせ、さ、
そこで俺の意識は途切れた
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