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「あ、天神さん。」
今日は休みだったのでゴロゴロしていると天神さんが見えた。
「ユラギさんですか。どうかしましたか?」
「あの、琴羽のことなんですけど。」
「あぁ、神城君のこと?」
天神さんは琴羽のこと、知ってたんだ。神様って部下の名前とか全部覚えてるのかな?
「琴羽が彗星?の女神に加護を貰って天使になったって言ってたんですけど、それって誰でも天使に上がれるんですか?」
「それはね、ちょっと違う。」
天神さんは机に置いてあったお茶をそっと飲む。
「加護を貰った者は加護の持ち主からひとつ願いを叶えて貰えるんだ。神城君は天使になることを望んだ。」
「けど、どうして天使になることを望んだんだろ。」
「それは私にも分からない。」
琴羽は私と違ってゲームが好きでなければ異世界が好きでもない。そんな琴羽が異世界丸出しの天使になることを望んだって…
「まぁ、それは神城君の願いだから、触れてあげないでね。」
「わかりました。」
そう言って天神さんはすっと消えていった。私はさっきまで天神さんが飲んでいたお茶を見つめる。…不思議だ。神様って幽霊みたいに見えないけど、感触はあったりするものなんだな。
扉の向こうから笑い声がする。ナギ先輩の声だろうか。
「行きたいけど休めって怒られたんだよな。」
私は2週間連続勤務しており、その仕事時間は毎日15時間。みんなが可愛いから気づかなかったけど倒れたことがあるみたい。
そんな私を見てナギ先輩は休みを私にくれた。
「本でも読もうかな。」
取り出した本のタイトルは
『転生したら最強だった件。』
この主人公、補食スキルを使って魔王まで進化するヤバい物語。けどなんだかんだでカッコいい。街は楽園と化すし。
「やっぱ異世界って…いいなぁ。」
そんなこんなで一日が経った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ゆっくり休めた?」
「はい!」
今日もこの異世界保育園《リールベント》
で幼児と戯れる。
「ユーナちゃん、おはよう!」
「はーざいます。」
ユーナちゃん、ちゃんと挨拶できるなんてっ、賢すぎる。
「せんせ、ユーナをよろしくお願いします。この前は迷惑をかけてしまいほんとうに…」
「いえ、大丈夫ですよ!」
ユーナちゃん、ニコニコしてこっちみてくるけど迷惑かけたの貴女だからね。けど幼児ってこれが仕事なまであるから、私は許してあげれる。
「そういえばナギ先輩、先輩は加護ってありますか?」
「そんなものないわよ。」
今日は先輩、なんだか怒っている?ため息が多い気がする。
「ガゼリアさん、ナギ先輩なんであんなに怒ってるんですか?」
「ははは…ちょっと喧嘩しちゃって。」
ガゼリアさんが言うにはこうだ。
ナギ先輩がガゼリアさんについて聞いてきた。
「ねぇ、ガゼリア君?ユーナちゃんの件だけど。」
「はい?なんでしょうか。」
「もっと笑えないの?」
ガゼリアさんは子供が好きだが笑うのは苦手と言う。いつも無愛想な顔をしているがそれは機嫌が悪いとかではなく笑うのが苦手なだけ。
「はは、僕だって努力してますよ。」
「なら子供の前でも笑いなさい。貴方はいつもそうなのよ。」
ガゼリアさんはその言い方にカチンと来たそうだ。
「これは僕が悪いんですよ。」
「一回笑って。」
ガゼリアさんのその顔は化け物同然。こんなの言ったら悪いけど余計怖くなってる。
「僕の家系全員こうなんですよねぇ…。はぁ。」
ガゼリアさんは落ち込んでしまった。笑顔が苦手な家系って。笑わないと自分も楽しくなくなるような気がするんだけどな。
「私と練習します?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
私は琴羽を家に呼んだ。
「てな訳でガゼリアさんです。」
「リンヴァーデム・ガゼリアです…。」
ガゼリアさんの名前ってリンヴァーデムなんだ。初めて知った。
「へぇ、この竜種の人が例の無愛想さん。」
「笑ってるつもりなんですけどね。」
例の笑顔を琴羽に見せる。
「はははっ!これはまさしく化け物だね。」
失礼だな。
「口角上げすぎかもね。」
「こ、こうですか?」
ガゼリアさんは言われたとおり少し口角を下げた。しかし、また無愛想な顔に戻ってしまう。
「難しい…。」
私たちからすればなぜ笑えないのかが不思議で仕方ない。ガゼリアさんは鏡の前で何度も練習をした。
ーー数時間後ーー
「それ!」
ようやく笑い顔が良くなった。
「ありがとうございます!では、謝って来ます。」
ナギ先輩のもとへ向かったガゼリアさんを影でひっそりと見守った。
「あの、」
「なに?」
もじもじとガゼリアさんは話す。
「ちゃんと話して?」
「はい、あの…昨日は…すみませんでした。」
またもじもじしたが私たちが聞こえるぐらいの声だった。
「私こそごめんなさい。言い方がきつかったね。努力する。」
ナギ先輩が微笑んだ。そしてガゼリアさんも。…このときの微笑み方は練習したのよりも何倍も良かった。