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たった1日の記憶の中にどれだけの思いを残せるだろう。
どれだけ言えば伝わるだろう。
この世界に、きみがいる。
たったそれだけのことが、泣きたいくらいに嬉しいってこと。
だから、さよならしたって大丈夫。
何度でもまた、出会えばいいだけ。
Ⅰ それは光の始まり_
あの日のことは、いつだって、はっきりと思い出せる。
高校1年生。夏休みが終わってすぐの、まだ蒸し暑さの残る、夏と秋の間の日。
衣替え前の夏服のブラウスは、湿った肌によくくっつく。ネクタイを軽く緩めると、
ぬるい風が、少しだけ心地よく首元に当たる。
鞄からスマートフォンを取り出して時間を確認した。いつの間にか、夕方の五時をとっくに回っていた。
授業が終わってからすぐに学校を出たのに、随分のんびり歩いてしまったと思いながら、それでもまだ家には戻らずに、どこかに向かって、足を進める。
見慣れない街並みを何気なく眺めた。駅の東側の大通り。再開発されたばかりのお洒落な商店街と、その向こうの高台の住宅街。行き交う自転車と人間。いろいろ混ざりあった、匂いや音。
今日、帰り道を変えたのは、ただのわたしの気まぐれだった。いつもどおりの帰路の途中、真っ直ぐに行くはずの交差点で右折したことに、理由なんてものはない。
タイル舗装の歩道をぼんやりと進み、正面から来た数人の集団を避けて、脇道に逸れる。そのまま緩やかな坂道をのぼっていく。
ローファーの爪先を見ながら歩いていた。建物に挟まれた細い道を抜けたその先で、おれは、小さな噴水のある公園を見つけた。
背の高い木が周囲を囲んでいた。覗いてみると、噴水の広場の向こうにも、金木犀に挟まれた散歩道が続いているのが見えた。広い公園のようだ。高学年くらいの小学生たちや、犬の散歩をしているおじいさん、ジョギング中の女性なんかが、各々まわりに構わず過ごしている。
入口の車止めを通り抜けて、おれもなんとなぬ、公園の中に入った。ベンチに向かったら、犬の散歩中のおじいさんに先を越されたから、噴水のほうに行って円形の縁に腰掛けた。
ふぅっと息を吐くと、急に両足にだるさを感じた。背筋を丸めながら、投げ出した足を手でさする。1時間以上歩いたから、さすがに疲れたみたい。家に帰らなきゃいけないけれど、もうちょっとだけ、もうちょっと、休みたい。
顔を上げる。空にはまだ日が昇っているけれど、少しずつ、昼から夕方の空に変わっている。
そのうち夜が来て、今日が終わる。そうしてまた、昨日までとなんにも変わらない、明日になる。
___カシャ。
音がした。何気ない小さな音だったから、はじめは気にも留めなかった。
僕は何度でもきみに初めての恋をする
読んでみてください❕
このお話は、⬆️の本のさとりーぬに変えたバージョンです。
予め、地雷の方はご了承ください。