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せんせーだけ身構えて拍子抜けする感じにきしろらしくて大好き!
『ガチャ』
「ほんまに鍵閉めとらんやんけ」
ーーー
その後、急いで自宅に帰りシャワーを浴びて準備に取り掛かった俺は、結局ビールやタバコ、ツマミなど、なんだかんだ沢山買い込み、ニキの家の前まで来ていた。
中に入ってしまえば、そこはもう2人きりの空間。
緊張で鼓動が早くなる。
意を決して中に入ろうとドアノブに手をかけたところで、冒頭に戻る。
「おじゃましまーす」
至って自然を装い、挨拶しながら中に入ってみたが、返事は無い。
「ニキ、ほら買ってきたで!!どこおるん!!」
返事がない。
よく考えると、もう日が沈んで暗くなっているにもかかわらず、家中真っ暗。
物音のひとつもしない。
(なんかあったとかじゃないよな??)
少し不安になる気持ちを抑え、 とりあえず彼が普段いる、いちばん大きな部屋へと向かった。
その部屋へと繋がる戸を開ける。
「すぅ…」
「なんや、寝とんのか…」
いつもなら執拗に絡んでくる家主は、ベッドの上で穏やかな寝息を立てていた。
俺も、なんだか拍子抜けして緊張が解ける。
とりあえず先に飲んでしまおうかと買ってきた自分用のビールをテーブルに置き、他の荷物を床に置いて、ニキが寝るベッドの端に腰かけた。
つきっぱなしのモニターに閉められていないカーテン。
机の上の飲みかけのペットボトルと封が切られているラムネ。
充電器に繋がれず、無造作にベッドへ置かれたスマホ。
おおよそ、編集の途中で力尽き、ベッドの上でネットサーフィンでもしながら寝落ちたのだろう。
「寝とったら、俺が来た意味ないやん…」
なんて呟きながら、嫌がらせで一瞬だけその高い鼻を摘む。
「んがっ…」
「ふはっ…w」
息を止められ出た声に色気もクソもなくて、思わず笑みがこぼれた。
(鼻つままれても起きひんってどういうことやねん…w)
面白くなってきた俺は、また鼻をつまんだり、その伸びたふわふわの髪を撫でてみたり…。
それでも起きない恋人の顔を見つめる。
(…にしても、ホンマに綺麗な顔やなあ…)
ずっとニキのことが好きだった。
いつからとか、具体的なことは覚えていない。
なんなら初めはいけ好かない野郎としか認識していなかったはずなのに。
撮影で絡むことが増えて、仕事なんて関係なしに話すようになって、気がついたら同棲までして。
いつの間にか、隣にいたこいつのことを好きになっていた。
グループ内だから、同性だから、”相棒”だから。
臆病な俺は、色々な言い訳を並べて、関係の変化を恐れて、自分の気持ちから目を背けた。
「好きやで」
酔った勢いで好意を口に出してしまった時の、全身から血の気が引く感覚
それと、その言葉を聞いて呆然としたあと、見たことがないような表情を浮かべ、
「俺も」
と微笑んだニキの顔を俺は一生忘れないと思う。
ーーーーーーーー
とはいえ、恋人になってから俺らの関係に変化があったかと言われれば答えはNOだ。
ニキの態度も今までと全く変わらず。
付き合ったことを報告したときのメンバーの予想に反して、付き合って1ヶ月たった今でさえ俺らは一線をこえていない。
なんならキスも。
最初は
「なにピュアぶってんのー?www」
といじってきたりぃちょも、
「え、何、ED…?」
もはやドン引きのレス具合である。
(ちなみにEDではない。あのガキはあとでしめる)
遠回りしてしまった分、”相棒”として過ごしてきた期間が長すぎて、なかなかそういう雰囲気になれなかった。
いやそれも言い訳にすぎないかもしれない。
気はずかしさと勇気のなさ。
いざそういうことを仕掛けようとしてみても、
見つめ返してくるニキの瞳を見たら、何故か自分が彼を汚してしまっている気分になって出来なかった。
だからこそ、付き合い始めてから初めて家に呼ばれた今日はなにか進展があるかと身構えていたのだが…。