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「おかえりなさいませ、主様」
どうしてこんな事になった、目の前の光景に若干宇宙猫になりながらも彼は思考を張り巡らせた。
その日彼__レオナ・キングスカラーは珍しく授業に出ていた。
理由?そんな事、彼の小間使いに強くお願いされたからに決まっているだろう。如何にも、そのお願いとは暫く世話をしない、という子供じみた脅しの様な物だったが。レオナが無断欠席すれば教師からの苦情は何故かラギーに行くのである
閑話休題、何故今こんな状況になっているのかと言うと、レオナが放課後まで爆睡していたからだ。……自業自得なんて言葉は受け付けていない。
勿論、それだけという訳ではない。寝惚けて見知らぬ猫をルチウスと間違えてしまった、というのも理由の一つに挙げられる。普段ならば見間違えないが、その日のレオナはうるさい兄からの鬼電によりあまり眠れていなかった。
まあ、そういう事で、その猫の持っていた指輪を自分の持ち物と間違えたのも仕方ないだろう。だって甥からのプレゼントにも似ていたのだから。
魔力も感じられない、ただの指輪…そんな物に危険を感じる者などそう居ないだろう。だから、そう、これは不慮の事故とも言えた。何たってレオナは授業中寝ていただけなのだから。
♦︎♦︎♦︎♦︎
「にゃ〜お…」
夕陽で空が赤く染まる頃、廊下の影から黒猫が飛び出してきた。
「……あ?ルチウス?」
この学園に黒猫は意外と少ない。その中でも有名なのがルチウスの為、まっさきに思い浮かんだのは仕方がないだろう。決してトレインなんかの授業が好きな訳じゃない、絶対に。
しかし…いつもと違った鳴き方をするルチウスを不思議に思い、目線を合わせて猫語で話しかけてみた。反応はない。
何となく撫でながら鳴き声を読み取ってみる…が、全く分からない。おかしいな。いくら寝起きとは言え、猫語は動物言語学の初歩中の初歩、絶対に分かるはずなのに。
キーン
床と金属がぶつかる音が響く、音のする足元を見れば見覚えのある、金色の指輪が落ちていた。
「ンで、こんな物お前が持ってんだよ。」
その指輪の送り主の顔を思い浮かべ、苦い顔をしながら指輪を拾い上げる。すると、ルチウス…いや、見知らぬ黒猫は用が終わったかの様に走り去っていった。
「何だったんだ。」
…まあ、あいつからのプレゼントとやらを無くす訳にもいかないので、指にでもはめておくか。
何となく指輪をはめた次の瞬間…、急に意識が遠のくのを感じた。