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誰かに手を握ってもらっている。
握られている、とは感じなかった。
なぜなら…それは、とても心地よかったから。
そっと目を開ける。魈が自分を見つめていた。
「…!」
彼の名前を呼ぼうにも、口が動かせない。
「無理にしゃべらない方がよい。まだ痛むだろうからな。」
空はうなずく。確かに、この状態では無理だろう。
「まったく…危険だと感じれば、我を呼べ。」
空は、でも、という感じに申し訳なさそうな顔をつくる。
「迷惑など感じるものか。我はお前を助けたい。…我を必要としてくれ。」
(あ…)
空は感じた。似ている。
(魈も…必要とされたかったんだ。)
空はうなずく。肯定の意。
危ないときは、魈を頼るという約束。
空の目元は優しかった。
魈は安堵する。そして、空の額に口づけをした。
「もう少し休め。寝不足なのだろう。」
そして魈は少し躊躇った後、
「お前の妹の代わりにはなれないが…我は我なりにお前のことを想っている。」
と言った。
空はありがとう、と言う風に目を細める。
「安心して眠れ。店主には我から言っておこう。」
空は魈の優しい声に導かれ、眠りについた。
END_