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この世には、七つの大罪という存在がある。
傲慢・強欲・嫉妬・憤怒・色欲・暴食・怠惰の罪だ。
それらの大罪を具現化したような特徴を持ち、悩みを抱える者。その特徴にどう向き合えばいいか考えている者、何も考えていない者……多種多様なカノジョたちがいた。
「ハァ、疲れたー」
ため息を吐き、机の上で伸びをしている俺は
咎士文戯。入学から一ヶ月たった高校一年生だ。
「お疲れ様だね、文戯。今日も一緒に帰ろうか」
「いいぞ」
この銀色の短髪に高身長のイケメン男子は西条望だ。
妬ましい程のイケメンだが、初日に孤立しかけていた俺に話しかけてくれたので、
多分…性格も良い…と思う。というのも、西条望は女遊びが激しいと噂がたっているのだ。まあ…俺は信じていないけど。
「おーおー♫」
「いえー」
ノゾムと一緒に帰っていたのだが、いつのまにかカラオケに来ていた。
ノゾムは歌が上手い、イケメンな上に上手い。それにムカついた俺は、てきとうな合いの手を入れた。
…ハァ、だからモテないんだろうな、俺。
「次、文戯の番なー」
「俺はいいって…」
「そう?でも、折角カラオケに来たんだ、歌わなきゃ損だろ?」
困り顔でマイクを渡してくるノゾムを見て、歌わざる逢えなくなった俺はマイクを奪うようにして取った。
「わかったよ、歌うよ」
「そうこなくちゃ」
カラオケから出る。
「ハァ、歌ったー。ん?どうした、ノゾム」
ノゾムは疲れたような同情したような顔で、こちらを見ていた。
「いや、文戯があんなに音痴…げふんげふん、あんなに汚い歌声が出せるとは思わなくてね」
「ッッ、だから嫌だったんだよ、歌うの」 「顔真っ赤にしちゃって可愛いー。また行こうね、カ・ラ・オ・ケ」
揶揄うように「ぷぷぷ」と口の前に手を当て、悪戯に笑う。
「やだよ、次は別の所な」
「分かったよー」
手を後頭部にやり、俺の前を歩くノゾムの顔が何処となく嬉しそうに見えた。
「…そういえばさ」とノゾムは口を開く。
「何だ?」
「僕達のクラスに不登校の女の子っているじゃん」
「そうだな、名前は確か…」
「「松葉暁積」」
私は今日も家に引きこもっている。
学校で嫌がらせを受けているとか、学校に居づらくなったとかではない。単純な話しだ。
ただ面倒くさい。家でもそうだ、昔は束ねられていて、綺麗だったこのあさぎ色の髪もボサボサになっていて。
オシャレで着ていた服も、今やクローゼットの中だ。仕舞いには、オシャレのオの字もない、家用の灰色のジャージ。私は”怠惰”なのだろう。
すると、玄関のインターフォンが鳴った。
面倒くさい。だけど、大事な用事かもしれないから出る事にした。
ゆっくりとチェーンをかけた、ドアの隙間から外を覗く。
「何のようですか…」
男の子だった。外見こそ普通だったが、優しい目をしていた。まるで、私を暖かく包み込んでくれるかのように。
いつも通り授業が終わり、帰りの準備をしようと鞄に教科書を詰めていると。
「咎士、悪い。このプリント松葉の家に届けてくれないか?」
担任の教師が数枚のプリントを差し出してくる。
「いいですけど…松葉さんの家知りませんよ」
「ああ、それならこれ見てくれ」
と数枚のプリントの一番下から紙を取り出した。
おそらく、松葉さんの家の住所だろう。
別に良いんだけどさ、入学以来、学校に来てなかったから気まずいんだよな…
ノゾムと一緒に来ようと思ったのに、あいつ用事があるからとかほざきやがった。
絶対、女遊びだわ…チクショー。
そんな事を考えていると、松葉さんの家の前に着いた。ごく普通の一軒家だ。
俺は「ふう」と呼吸を整え、インターフォンを鳴らした。