カランカラン
店の扉の開閉音がしてお客さんが来たのだろうとカウンターから顔を覗かせると、 そこには、水を滴らせたかっこいい男の子がいた。
「あの、すんません。こんなんで。ちょっと雨宿りしてってもいいすか?」
「…っ!どうぞ。あ、良かったら、これ、使いな?」
「あざす」
がっしりした体格に整った顔、短く切り揃えられた髪の毛をわしゃわしゃと拭く様子をじっと見つめる。
「すんません。急に雨降ってきて…」
「全然いいよ。なんなら、なんか飲む?」
「あー…っと、俺コーヒー飲めないんすけど…」
店内を見渡しここが喫茶店だということに気づき眉間にしわを寄せながら返事を返してくる男の子にふっと笑みがこぼれる。
「コーヒー以外もあるよ。クリームソーダとかジンジャーエールとか…ソーダとか」
「あ、じゃ、ソーダで」
ぱっと顔を上げて嬉しそうに言われてドキリとした気がした。
「ソーダね。じゃ、そこ座って待ってな」
カウンターの椅子を指さして言う。
初めて会った気がするのに彼の持ってる雰囲気なのか自然に話せている気がする。
「はい。ソーダ。どうぞ」
「あざます」
のどが渇いていたのか豪快にゴクゴクと飲み干す男の子に若さや少年感を感じて「若いなぁ…」と思った。
「恵比寿学園の子?」
「あーはい。恵比寿学園、3年の佐野勇斗っす」
「後輩じゃん」
「こうはい…?」
きょとんと首をかしげる佐野くんの不思議顔に不思議顔で返す。
「俺は、ここの喫茶店のマスターの吉田仁人。佐野くんの10上の28歳」
「にじゅうはち…?」
またまた、不思議顔を向けられるがアラサーのしがない喫茶店のマスターだ。
「見えんすね」
「そんなことなくない?てか、佐野くん。なんかスポーツやってる?凄く体格とか良さげだけど」
「サッカーやってるっす」
「え、恵比寿学園のサッカー部って強いんじゃないっけ?」
「まぁまぁっすよ?」
俺が学生時代の時、吹奏楽部として全国大会に応援に行くほど強かった。
今はどうかはちょっとわからないが相も変わらず毎年全国大会に名をはせているはずだ。
「もしかしてさ、佐野くんスタメンだったりする?」
「まぁ」
「しかもさ、エースでしょ?」
「エースかはわかんないすけど、背番号は10番もらってます」
「うわー!だよね!そんな感じするわー!」
静まりかえった店内に自分の声が響き渡る。
その声に佐野くんがビクリと肩を揺らす。
「あ、ごめん。佐野くん、見た目のまんま、主人公って感じするからさー」
「そうっすか?」
「えー?自覚ない?主人公ぽくってすごくかっこいいよ」
「え、俺かっこいいっすか?」
「え?うん。よく言われるでしょ?」
「よく…かはわかんないすけど、言われるほかもしんないっす」
でも、そうか。恵比寿学園の運動部ってなんかよくわからんけどイケメン揃いだった気がする。
「うん。一般的にモテると思うよ。佐野くん」
「…一般的に…?」
強張った顔を向けられてなにかまずいことでも言ったかと冷や汗が背を伝う。
「吉田さん的には…」
「え?」
「吉田さんから見ても、俺ってかっこいいですか?」
俺?俺の意見?
「いや、うん。かっこいいと思う」
「そっすか」
少しだけ佐野くんの強張った顔が緩み頬が上がった気がした。
「あ、雨上がったみたい」
「すんません。長居して」
「いいよ。全然。今日はお客さん全然来なかったし、俺も後輩と喋れて楽しかったし」
カランカラン
店の外まで佐野くんを見送ろうと扉を開ける。
「じゃ、佐野くんサッカー頑張ってね。気を付けて帰るんだよ」
バイバイと軽く手を振る。
すると、その手をつかまれ真剣な目の佐野くんと目線が合う。
「また、来てもいいっすか」
あまりにも真剣な目線にドギマギする。
「いいよ?喫茶店だし、いつでもどうぞ?」
「…っす」
緊張がとけたのか柔らかい表情を浮かべる佐野くんにさっきとはまた違う胸の高鳴り感じた。
「じゃ、また」
軽く右手を挙げて颯爽と去ってく佐野くん。
「やっぱ、物語の主人公じゃん」
NEXT→反応次第・・・
コメント
2件
わわわ、最高すぎます🥹🥹 みなしょーもさのじんも大好きな私にとっては得でしかない、笑
あれ、みなしょー書くんだ、と最初は嬉しい気持ちとさのじん更新少なくなる、?というどぎまぎした気持ちから始まり読み進めるとタイトルをちゃんと見ていなかっただけでした。 ちゃんとさのじんですね。 言わずもがな最高です。大好きです。