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今日は、海の日。
祝日で、学校が休みなのが本当に嬉しい。
海の日には、毎年、地元の大きなお祭りがある。私は幼い頃、親にそのお祭りに連れて行ってもらったが、とにかく人混みが物凄い。
まぁ。今は、一緒に行く友達もいないし、私には関係のない話だ。
しかし、何もやることのない一日は暇すぎて、ベッドの上で転がりながら、スマホでSNSを開く。
そして、別に誰かに見てほしい訳でもない。フォロワーも二人しかいない私のアカウントで【今日は予定ないし。めっちゃ暇ー】と、ストーリーを投稿した。
すると、すぐにフォロワーの一人からDMが来た。
【星崎です。暇だったら、今日、一緒にお祭りいこー。実は、行く予定だった子が用事入って、人数が足りなくなっちゃったの】
私は、送られてきたDMを見て混乱した。
まさか、フォロワーの一人が、クラスメイトの星崎さんだったなんて。
良かったぁ、セーフ。私は今まで、SNSで学校の悪口などは言ったことはない。
でも、散々、今日は疲れた。とか、もうしんどい。などの投稿はしていて、それを全部、星崎さんは見ていたのだろうか。
考えただけでもひやひやする。
口は災いのもと、ということを痛感する。
それより、今はなんと返信するべきか。
星崎さんは、私が暇で、今日の予定がないことを知っている。
仮病を使うのも明らかにおかしい。きっと、行きたくないから嘘をついたのだと、簡単にバレてしまうだろう。
情けのない私は、結局、断る理由が見つからないので、星崎さんに【誘ってくれて嬉しい。一緒に行くね】と、DMを返した。
もし誘いを断ったら、あとで何を言われるかわからないし。
私なんて、所詮は数合わせだ。行けなくなった子の代わり。空気を読んでそこにいるだけでいい。
でも、辛いな。ただの数合わせにされるの。
しかし、そんなことを言っている暇はない。
浴衣など持っていないので、考えた末、ベージュのワンピースを着ていくことにした。
クラスメイトの子たちより華やかすぎてもダメだし、地味すぎても浮いてしまう。
しかし、夕方に、祭り会場であるM駅周辺でいざ集合してみると、女の子はみんな浴衣を着ていて化粧もバッチリしている。
明らかに、私だけ浮いてしまった。
女子は星崎さん、男子は達也君が声をかけて女子五人、男子五人が集まった。
男女ともに、わいわいと楽しい話をしながら、人混みの中、屋台を回る。
私は、その後をついていくだけ。
それだけなら良かったのだが、みんなの後を気怠そうについていく、月君が隣にいる。
私が、何か話さないとと思っていると「だりー。帰りてー。つまんな」と、月君が呟いた。
「そうだよね。ごめんね。私なんかと一緒に歩いててもつまんないよね」
「はぁ?ちげえよ。この人混みがだるいし、つまんねえって言ったの」
「そ、そうなんだ」
「お前さぁ。そういうのやめたほうがいいよ」
「え、何が?」と、私が言ったら、彼は大きなため息をついて「やっぱ、俺、お前嫌いだわ」と呟いた。
慣れない人混みの中も、隣で嫌なことを言われるのも、ストレスで仕方がない。
それでも、時間はゆっくりと過ぎていき、辺りが暗くなってきた頃、花火が始まるのでよく見える港の方に、みんなで移動した。
その途中、人混みで混雑し過ぎて、私はみんなと逸れてしまった。
きっと、私なんかがいなくても、みんな楽しく過ごすし、いなくなったことすら、すぐには気づかないだろう。
もう限界だ。このまま帰ろう。あとで、星崎さんにはDMで、逸れたあと見つけられなくてごめんと適当に謝っておこう。
私は、所詮、数合わせで、張りぼてで、偽善者で…。
嫌なことばかりを考えてしまう。
私は、心が温かくて、人助けができて、可愛くて、そんな人になりたかったのに。
全然違うじゃん。建物のガラスに映る自分の顔を見たら涙が目から溢れていた。
涙が止まらない。私は、急いで路地裏に駆け込む。
しばらく、気持ちが落ち着くのを待っていると、後ろから声をかけられた。
「どうしたの君?彼氏とケンカした?」
「お、結構、可愛いじゃん。俺らと遊ぼうよ」
見ると、明らかに柄の悪い二人の男性。
「こんな路地裏で、女の子が一人で泣いてるなんて。優しく声かけたくなるじゃん」と、男性の一人が私の顔を覗き込む。
「そこに車止めてあんだけど、乗ってく?場所、変えようよ」と、もう一人の男性も私の隣に回り込んだ。
断らなきゃ。でも、こわくて声が出せない。
逃げなきゃと思ったが、両隣をすでに挟まれている。
どうしよう。誰か助けて。助けを呼ぼうにも声も出ない。