**—登校日—**
今日はなんだか、朝から変な感じがする。
悠斗が風邪で休んでから、湊と一緒に登校することが多くなった。昨日も一緒に帰ったし、今日もなんとなく湊と並んで歩いていた。
でも、今までみたいに無言で歩くわけでもなく、湊が時々私の方をチラっと見てきて、なんだかドキドキしてしまう。
「……なに?」
「いや、なんでもない。」
湊は素っ気なく言うけど、その目線が妙に私にピタッとくっついてる気がして、ちょっと落ち着かない。
(もしかして、湊、やっぱり…気にしてるの?)
「でもさ、悠斗がいないとさ、なんだかちょっと…寂しいな。」
「……あ?」
「ううん、なんでもない。」
私が軽く笑いながら言うと、湊は少しだけ黙って歩く速度を速めた。
(え?なんで急に歩速を上げるの?)
少し距離が縮まったと思ったけれど、また急に離れるから、逆に不安になってしまう。
(湊、どうしてるんだろう。なんか素直じゃないけど、もしかして私のこと、気にしてるのかな…)
**—学校へ到着—**
学校に着いてからも、湊は相変わらず気まずい感じで過ごしていた。
でも、昼休みになると、突然湊が私に声をかけてきた。
「お前、昼休みどうすんだ?」
「え?どうするって…普通に食べるけど。」
「ふーん。」
湊はそう言うと、私のほうを少し見てから「じゃ、あとで。」と言って、どこかに行ってしまった。
(なんだ?今の…?)
しばらく考えたけど、気になるから友達に聞いてみた。
「ねえ、湊、なんか変じゃない?」
紗菜が思いっきり笑いながら言う。
「変って言うかさ、なんか、ちょっと素直になってきた気がするけど?」
「素直?」
「うん、ほら、さっきの感じとか。」
「さっきって…」
「いや、例えば、わざわざ『あとで』って言ったりさ。」
「え?」
「普段はそんなこと言わないじゃん?」
「う、うーん…」
そう言われてみると、確かに湊はそんなことしなかった気がする。
**—放課後—**
放課後、今日も湊と一緒に帰ることになった。
「おい、帰るぞ。」
「うん…」
私たちはいつも通り並んで歩く。
そのとき、湊が少しだけ近づいてきた。
「お前、歩くの遅くない?」
「え?」
「ほら、歩けよ。」
突然、湊が私のペースに合わせて、ちょっと距離を縮める。
「え、ちょっと!?」
その距離感が、なんだかドキドキする。
今までの湊は、こんなに私に近づいてこなかった。少しだけ手が触れるか触れないかの距離感。
(え、これって…)
「な、なんで急に近づくの?」
「別に、急にってわけじゃない。」
湊はいつものように冷たく言うけれど、顔はちょっと赤いように見える。
「なんだよ…」
その言葉に、私は胸が高鳴るのを感じた。
(もしかして、湊、私のこと…気にしてるの?)
でも、湊がこんなに素直になるなんて…不安になってきた。
「おい、さっきから何ぼーっとしてんだ。」
「え?いや、別に…」
湊の冷たい言葉に私は一瞬、戸惑いながらも、何となく嬉しい気持ちもあった。
(湊の態度、もしかして変わり始めてるのかも…?)
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