#.1 一目惚れ
椎名「いい人見つかるかなぁ…」
私、東雲財閥の娘、東雲椎名は所謂『箱入り娘』…悪く言えば『ニート』だ。
親を亡くし、多大な財産と大きなお屋敷、そして可愛らしいが、少しよそよそしい使用人、「毒牙 零」と一緒に過ごしている。
わがままだの引きこもりだの、様々なレッテルを貼られている私。
そんな私の、名誉挽回の日がやってきた。
コンコンコン
零「お嬢様~?入りますよ?」
椎名「あっ、零。いいですよ~!」
ガチャッ
零「…ぁ~…はぁぁ…」
零は部屋に入る途端に、ため息をつく。
不満でもあるのだろうか?
首をかしげ、零を見ると、まるで汚いものを見るような目で、私を見ている。
少しむっとすると、彼女は嫌そうに言った。
零「なーんでこんな散らかってるんです?汚いんですが」
放り出されたクッション、つけっぱなしのパソコン、絡まった充電コード…
改めて見ると散々な有り様だった。
椎名「え、えへへ~…ご、ごめん☆」
零「もぉ…後で片付けてくださいよ?」
そういうと、彼女は二つに結った白の髪を揺らしながら、隣へ座る。
椎名「零って白髪だよね、年配?」
零「は?」
ギロッと猫のような目で睨み付けてくる。
テキトーに不自然な笑顔を見せて、誤魔化しておこう、そうしよう。
椎名「あっそーいえばそれなに?」
零「え、あぁ!これはですねぇ…」
「お見合いさせていただく、男性候補です!」
さっきとうってかわって、にっこりと笑いながら、メニュー表のようなものを開く。
中にはずらっと色々な男性の写真と、その方の情報が並んでいた。
一人一人目を移し、確認していく。
どれも微妙だなぁ、そんなことを考えていると、突然ドキッと胸が高鳴る。
艶があるが少し癖のある長い金髪、黒縁のかっこいい眼鏡、垂れ目がちでキラキラと輝く橙の瞳。
男性の口は、優しく微笑んでおり、私を包み込んでくれそうだった。
椎名「これっ、この人誰!?」
零「えっ?あ、その人は”星河 輝生”、24歳の方ですね」
星河さん…その魅力に目を惹かれ、今までに感じたことのない胸の高鳴りを感じる。
私の5つ上の年上、そこも魅力を感じるポイントなのかもしれない。
一人でときめいていると、心配そうな、不安そうな表情で零が話す。
零「椎名様、言いにくい話なんですが…」
聞くと、彼は所謂『ダメ男』。
女を散々誑かし、金を巻き上げ、ギャンブルや煙草、酒に費やすと言う。
きっと私もその道具の一つになるだろう。
止める零を横目に、私はこの人と付き合うことを、もう心で決めていた。
好きな人に大切なお金を渡す、大切なものを渡すことは愛なのでは?
お金を渡して支え合うのは愛なのでは?
愛について、ぐるぐると考えを巡らすうちに、段々と何がなんだかわかんなくなった。
それでも、一つだけ、心に決めたこと。
反対されるかな、そんな不安を胸に抱き、指を指し、呟いた。
椎名「私、星河さんとお見合いしたいです」
零「お嬢様!?聞いてましたか!?」
「お嬢様はただの金づるに…」
椎名「それでもいいの」
私は真剣な顔で零に話す。
零は相変わらず、心配そうに私を見つめていた。
深く深呼吸し、思いのままを言葉に示す。
椎名「私の心に決めた人と、お見合いしたいのっ…」
「何言ってるかわかんないかもだけど、私はこの人に惹かれたんですよ、!」
「好きな人と、会ってみたいです」
うまく言い表せない。
少しの沈黙があり、零はゆっくりと顔を上げ、口を開いた。
零「分かりました、お嬢様」
「星河さんとのお見合い、了承致します」
零は不安がまだ残る笑顔を見せた。
私はすっきりと心が晴れ渡り、早く会いたい、その気持ちで埋め尽くされた。
椎名「お見合い、楽しみだなぁ…!」
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