テスト勉強を開始してから、1週間がたった。俺は大分順調に進んでいる。ノゾムはというと、一度熱が入るとやりきるまでやめないタイプだったお陰で、俺が作ったテスト対策のプリントで100点中72点を取った。良いとも悪いともいえないが、最初の頃に比べたら断然良い。
「…それで、何で人数が増えてんの?」
「「え?」」
2人同時に反応を示した。1人はいつも通りのイケメン男子のノゾムだ。もう1人は白ギャルの安良木甜瓜だった。
俺は日直の仕事があり、放課後に教室の掃除をしていた。
「おい、これ頼むわ」
バケツをこちらに差し出しできたのは、クラスメートの丹生誡だ。彼は俗にいうヤンキーというやつだ。耳には何個かのピアスを開けていて、服も着崩している。なんて典型的なのだろうか。
「う、うん」
ノゾム相手とかなら強く出られたけど、この世は弱肉強食だ。そして俺は弱い方に分類される。
「はい、これ」
「おぅ、さんきゅな」
と素直にお礼を言ってくれたので、悪い人で
はないのかなと思った。
「何見てんだテメェ」
前言撤回、やっぱり怖い人だ。
回想を終えた俺は、目の前の光景を再度見直す。いつも通りイケメンのノゾムにいつもは居ないはずの安良木甜瓜。白ギャルがいた。
しかも前にも見覚えのある山のポテトがテーブルの上にどかどかとたっていた。
「何でいるんだよ…」
「…え?」
と不思議そうな顔をして安良木さんはポテトを10本ほど鷲掴みして口へ運ぶ。5回も噛まないうちに飲み込む。ちゃんと噛もうよ…
「西条さん言ってなかったの?」
「ごめんね、忘れてたよ」
ノゾムは平謝りをする。本当に反省してるのか?…
「今日から一緒に勉強することになったんだよ」
安良木さんはポテトを鷲掴みながら言う。
「…マジか、それはいいけどまずはその山のポテトを片付けようよ」
「はーい!」
満面の笑みで山のポテトを貪り、瞬きをした途端にポテトが消えていた。
「じゃあ、これ解いてね」
ノゾムに何回か俺が作ったテストをやらせようと思っていたため、数枚用意していた。
ノゾムと安良木さんに1枚づつ配るとノゾムは嫌そうな顔をしたが、安良木さんは眼鏡をかけ、淡々とした表情で解き始めた。
ギャルが眼鏡とか…ギャップ萌だ!
「解けたー!」
「僕も、結構いい感じだよ」
安良木さんは眼鏡を外すと同時に、綺麗な茶髪を煌びかせた。
テストの採点を終えると…
「何でこんな点数取れるのかな…」
俺は悲しみと怒りで震えていた。
ノゾムのテストには28点、安良木さんは2点と書かれていた。チクショー…どっちも頭悪いのかよ…
「…ノゾム?前、72点だったよな」
「…文戯怒って…る?」
「怒ってるに決まってるだろぉ!」
沸々とした感情を俺は思い切りぶちまけた。
「大体お前は…」とノゾムに説教をしている横であわあわと、手を前にしている安良木さんが見えた。我に返り、「ふう」とひと呼吸おき。
「ノゾムも安良木さんも、ちょっとは勉強できてもらえないと…」
困り顔で俺が言うと。
「ごめんなさい」
しゅんとした表情で俯いた。
「…今日はもう帰ろうか」
とても勉強ができる空気ではなかったため、俺達は帰ることにした。
帰宅し、カフェの出来事を振り返る。
流石に言い過ぎたか…いや、でもな…
とぐずぐずしていると、ピロンと携帯の着信がきた。ノゾムからだった。
携帯の画面には、「今日はごめん、あと明日からしばらく一緒には帰れない」というメッセージがきていた。
僕、西条望は同級生の男子…咎士文戯とカフェで喧嘩をした。喧嘩というか圧倒的にこっちが悪いんだけど…。
先にお代を置いて、カフェを出ていった文戯を見た後に、僕は安良木さんと目を合わせた。
「どうしよう…」
「あんなに怒った文戯見たことないや」
「多分だけど、もう文戯君に勉強教えてもらえないよね…」
沈んだ表情を安良木さんは浮かべる。
確かにもう勉強を教えてもらうのは無理かもしれない、だからといって勉強をしない訳にもいかない、そこで僕1つの案を思いついた。
「…2人で勉強して点数上げて文戯にまた勉強見てもらおう」
「…そうしよっか」
こうして僕たち2人の勉強会が始まった。
「今日は国語と英語をします」
「はい!」
2人で勉強を始めて2日目、テストまで残り7日になった。文戯が不在のため、勉強の進み具合は文戯に教えてもらっていた時と雲泥の差があった。
「く…筆者の考えを書きなさいとか、そんなの書くの無理だよぉー」
安良木さんは頭を抱えていた。
「文戯がいないとダメだぁー」
「望ちゃん、お腹空かない?」
「…勉強しなきゃだめだよ」
そんな会話をしていると、僕たちが座っている席に人影が近づいて来た。
「甜瓜。何やってんの?」
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