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ふっふふーん♪
やっとドラマの収録が終わったぁぁぁ!
これでやっと学校に通える。待ってて下さいね、HARU様!
そういえばHARU様のお名前をちゃんと伺ったことがなかった。名前がわかればすぐに見つけられるのに。
いや、例え名前がわからなくても、あれだけのイケメンならすぐに見つかるはず。むしろ学校では有名人かも知れませんね。ふふふ。
先日はあの彼女さんさえいなければ、もっとHARU様との距離を詰められたのに。
それにしても、最後のほっぺにキスは緊張しました。私はファーストキスまではキスNGで女優をやらえてもらっているので、凄くドキドキしました。ですが、私のことをだいぶ印象づけられたし、ちょっとずつ私を意識してもらえるように頑張るぞ!
ーーーーーーーーーー
私は、2ヶ月遅れの高校生活を開始した。
うちの高校は進学校ではあるが、芸能活動などにも理解のある学校で、テストなどでしっかり結果を出せば進級することができる。
初登校は、当然1人での登校だった。早く友達が出来ればいいんだけど。でも、まずはHARU様に挨拶に行かないとね。あと、ついでに彼女さんも。
私は高校に着くと、まず職員室へ向かった。向かう間にも、すれ違った生徒達は私に気がついたようだ。
「お、おい、あれ」
「なんだよ?」
「田沢桃華だ!」
「すげー!本物だ!」
ふぅ、私も少しは有名になったのかな?いや、私が目指す女優になるには、この程度で満足してちゃダメだ。もっと上を目指さないと。
ガラガラガラ
「失礼します」
「おぉ、来ましたね。私が担任の篠崎です。よろしく」
「田沢桃華です。よろしくお願いします」
「いやぁ、私は田沢さんのファンでね。担任になれるなんて嬉しいよ」
うん、人当たりの良さそうな先生ね。でも、なんとなく嫌な感じがする。あの目、痛いファン達と同じような目。ああいう輩は何するかわからないから関わりたくないんだけど。
でも、担任の先生だから少しは我慢しなくちゃね。私の仕事はどんなことがスキャンダルになるかわからないから。
さて、先生への挨拶も済ませたので、私はHARU様を探しに行きましょう。確か2年生のはずなので、ひとつずつ潰していきましょうか。
まず、私が向かったのはA組だった。
ガラガラガラッ!
もう少し静かに開ける予定だったのだが、焦る気持ちから予想以上の力が入っていたようだ。凄い勢いで扉を開けてしまった。当然だが、視線は私に集まり、教室内は静まり返っていた。
だが、そんなことはどうでもいい。HARU様を探さなくては。私は、今のうちに人探しをすることにした。しかし、HARU様を見つけるには至らず、クラス内が騒がしくなってきた。
「お、おい、あれ」
「田沢桃華だ」
「やばい、可愛いくない!?」
「私ファンなんだよね!」
もう、気が散るから静かにしてくれないかしら。
そんな中、一人の男性が近づいてくる。
「田沢さん、どうしたの?ここは2年の教室だよ?」
何よこの人。そんなの知ってるわよ。
しばらく無視すれば帰ると思っていたのだが、どうやらこういう人種には効き目がないようで、懲りずに話しかけてくる。
「田沢さん、誰か探しているのかな?もしかして、俺のことーーー」
「違います。ちょっと静かにしててくれますか?気が散ります」
流石に面倒になってきたので、キッパリと答えることにした。確かに顔はそこそこ良いかもしれないけど、そのいやらしい視線は最悪ね。こんな男に引っかかる女の気が知れないわ。
しかし、先輩方の教室でこれ以上迷惑をかけるわけにはいかない。そろそろ潮時でしょうか?
「おかしいなぁ、確かにHARU様の気配がするんだけど」
そう、私の勘が言っている。HARU様が近くにいると。だが、実際はHARU様らしき人物は見当たらない。あれ?今、顔を伏せた人・・・。
怪しい人物を見つけたが、私の関心は別の方向に向いてしまった。私の視界の端に、ある人物が見えた。
「あっ、あなたは!HARU様の彼女さんじゃないですか!?」
私は思わず近くに寄って行ってしまった。
「あら、私のハルくんに何のようなの?」
相変わらず、余裕のある感じが腹が立つ。しかし、この人があの方の彼女さんであることは確か。認めざるを得ませんね。
「ふふふ、確かにあなたはHARU様の彼女なのでしょう。そこは認めます」
「意外とあっさりしてるのね」
「ですが、HARU様ほどの方です。何人彼女が居ようと構いません。必ず、私に振り向かせてみせます!」
そうです。HARU様なら彼女の5人や6人くらい居たって不思議じゃありません。でも、いつまでも正妻の座は譲りませんからね。
私は教室から出ると、その後も各クラスをまわり、HARU様を探したが、見つかることはなかった。そして、色々と目立ち過ぎた私を、迎えに来た先生に引きずられクラスへと連れていかれた。
「ちょっと、お母さん、痛いってば!ちゃんと歩くから引っ張らないでよ!」
「学校では先生と呼びなさい」
「わかったから、田沢先生!」
全く、と言いながら止まる先生。もう腕がもげちゃうわよ。だけど、これ以上迷惑をかけるわけにはいかないので、私は大人しくクラスへと戻った。
それにしても
「HARU様どこですかぁぁぁぁぁ!?」
私の叫び声は、虚しくも校舎中に響き渡ったのだった。
ーーーーーーーーーー
「ハルくん、危なかったねぇ」
「そうだな、まさかクラスまで来るとは思わなかったよ」
「やっぱりそっちのクラスにも行ったんだ」
俺たちはいつも通り、学食の一角で昼食をとりながら、桃華のことを話していた。綾乃は実際に会うのは初めてだったが、見かけによらず大胆で驚いていた。
「とりあえず、ハルくんは今まで以上に気をつけること」
「そうそう、髪の毛は特に気をつけること」
「そんなこと言われてもなぁ」
気をつけていたってバレる時はバレるんだから。だが、俺だって面倒ごとは嫌なので言われた通り気をつけることにした。
しかし、そんな俺の元には面倒ごとが押し寄せる何かがあるのだろうか?放課後になって事件は起こった。
ピン・ポン・パン・ポーン
『生徒の呼び出しをします』
お、校内放送とか久しぶりに聞いたな。誰か何かしでかしたのだろうか?
『2年A組、齋藤晴翔くん。至急、生徒会室へ来て下さい』
・・・は?
『繰り返します。2年A組、齋藤晴翔くん。至急、生徒会室へ来て下さい』
どうやら聞き間違いではなかったようだ。だが、生徒会室に呼ばれるようなことはないと思うのだが。そんな俺のこと心配そうに香織が見ている。
「ハルくん、生徒会長が誰だか覚えてる?」
「えっと、ごめん。誰だっけ」
香織は大きめのため息を吐くと、呆れながら教えてくれた。
「不知火澪しらぬい みおさんだよ。自分の学校の生徒会長くらい覚えててよ」
「あぁ、ごめん。そういえばそんな名前だったな。ありがとう」
「不知火グループのご令嬢だから、粗相のないようにね」
どんな人物だったかは、よく思い出せないが、とりあえず、待たせるわけにはいかないので、生徒会室へ向かうことにした。
ーーーーーーーーーー
コン、コン
「はい、どうぞ」
「失礼します」
ガラ、ガラ、ガラ
俺は初めての生徒会室へと、足を踏み入れた。職員室の次くらいには緊張するかも知れないな。
「待っていました、齋藤晴翔くん」
「えっ?」
生徒会室に入ると、黒の長髪が良く似合う女性が待っていた。そして、どんどんこちらに近づいてくる。その勢いに、気押され俺は壁際に追い詰められる。
近い近い近い!
顔と顔との距離は10cm満たないくらいの距離まで接近した。
「急に呼び出してごめんなさい。ちょっと失礼しますね?」
そう言って俺の前髪をサッと持ち上げた。
俺は彼女とばっちり視線が合う。
「やっぱりそうでしたか。まさか同じ学校にいらしたなんて思いもしませんでした、HARU様♪」
「え、いま、なんて?」
「はい、ですから、HARU様。先日の体育祭ではご活躍でしたね。まさかHARU様にお会いできるなんて」
ぽっと頬を染める、和風美人な生徒会長。どうやら体育祭の時に顔を見られていたみたいだ。
「HARU様」
「あ、えっと、その呼び方なんですけど」
出来ればその呼び方やめてほしいんだよなぁ。桃華の時も思ったが、なんだか恥ずかしい。
「そうですか。では、晴翔様とお呼び致しますね」
「ははは、もう好きにして下さい」
「はい。それでですね、この後少しお時間頂きたいのですが、大丈夫でしょうか?」
今日は確か、予定は何も入っていなかったはず。財閥のお嬢様を無碍に扱うわけにはいかない。だが、香織達になんで言おうか。
そんな迷っている俺に、生徒会長は微笑みながら提案する。
「彼女さん方も一緒で大丈夫ですよ?」
「あ、あはは、なんだかすみません」
「いえ、では了承ということでよろしいですか?」
「はい、大丈夫です」
そう返事を返すと、ぱぁっと笑顔が咲く。本当に和がイメージにぴったりの人だ。綺麗というより美しいという方が似合いそうだ。
そして、彼女は最後に爆弾をひとつ投下した。
「さて、では早速参りましょうか。私の家に」
「えっ?」
こうして、財閥のご令嬢の自宅へと連れていかれることとなった。香織、綾乃・・・なんかごめん。俺は心の中で謝ることしか出来なかった。