異魚天は刀を低く構え、アレクシスの再生能力を見極めようと目を細めた。
「何度でも斬るまでよ。」
スッ──
空気が一瞬震えたかと思うと、異魚天の姿が掻き消えた。
シュバッ!!
アレクシスの体を、鋭い斬撃が刻む。胸、腹、首──すべてが一瞬にして斬り裂かれ、血しぶきが弧を描く。
「クク……素晴らしい。」
アレクシスの顔は、依然として笑みを湛えていた。
次の瞬間、切断されたはずの体が、まるで時間が巻き戻るように元通りに戻っていく。
「どうした? もっと本気を出せ。」
異魚天は刀を払い、わずかに眉をひそめる。
「……やはり、容易には倒せんか。」
その時、レイスが血の虎をさらに強化しながら叫んだ。
「異魚天! もう一度、俺の血を使え!」
異魚天は頷くと、『月魄』の刃先にレイスの血を垂らした。刹那、刀身が赤黒い光を帯びる。
「──行くぞ。」
今度の斬撃は、異魚天がこれまでに繰り出したどの一撃よりも鋭く、速かった。
ズバァァァッ!!!
アレクシスの胸を貫通し、血の飛沫が舞う。しかし──
「フッ。」
アレクシスの体が、再び元通りになっていく。
「……無駄だ。」
異魚天は舌打ちした。
(レイスの血すら効かん……? ならば、この異能の本質は……)
アレクシスは満足げに笑う。
「そろそろ、こちらからも攻めさせてもらおうか。」
ドォンッ!!
アレクシスの手が虚空を掴むと、空間が歪んだ。
「100年前の『魔族の契約』──再現しよう。」
異魚天の目が鋭く光る。
「……やはり、貴様の異能は時間に関係するものか。」
アレクシスが指を鳴らすと、そこに現れたのは──
『100年前に討伐されたはずの、最強の魔族たち』
異魚天とレイスの前に、かつて王国を蹂躙した伝説の魔族たちが姿を現した。
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