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「え〜〜〜〜いッ☆ 道、どけどけですぅ〜〜っ♡」
中層第14区。
午前10時。まだ寝ぼけた住民たちの頭上を、轟音と共に“何か”が吹っ飛んでいった。
それは、スナイパーライフルを構える「一毬」だった。
地上50mの通信塔の上から、ドス黒い何かをブチ抜いた直後――
「ナイスショーット☆ それじゃ次は、いっけええええええええッッッ!!」
――通りの向こうから、バズーカを背負った「魔改造型一毬」が突撃してきた。
ドォン!!!
住宅一棟が、壁ごとくり抜かれて崩れる。
瓦礫の中から、筋骨隆々の「格闘家一毬」が現れる。
「いっちょ揉もうかコラァッッ!! おい、かかってこいやゴルァァ!!」
彼女は腰を低く落とすと、突っ込んできた武装警備車両を、正面からぶん投げた。
軽く。投げた。
「へい☆次の一毬ぃ、いっきまーす♡」
上空から、分身をまき散らしながら「怪盗一毬」が乱入。
敵? 味方? そんなの関係ない。ただただ速い。速すぎる。
幻惑しながら街区を抜け、標識、監視塔、電波塔――中層の象徴を、片っ端から破壊していく。
その後方――通称“本体一毬”は、余裕しゃくしゃくで、紅茶片手に浮遊椅子に座っていた。
「えっへっへ〜〜! 一毬はですねぇ、自分をよく知ってるんですよぉ!
なので……強い自分も、早い自分も、爆発する自分もぜ〜〜〜んぶ使っちゃいますっ♡」
耳障りなほど明るい声。
だが、背後に広がる街の光景は、“戦争跡”だった。
歩兵部隊は壊滅。
ドローン部隊は攪乱により誤爆。
市街の5区画がすでに無人地帯となった。
「中層、楽しいですねぇ〜〜♡ でもぉ〜〜、一毬ちゃんの侵攻速度、通常人間の五倍ですからぁ〜〜〜っ!」
そう。あまりにも異常なスピードで進軍できる理由は、この魔法――
《無窮自己列伝(ムキュウジコレツデン)》
可能性の自己召喚×5体同時運用。
その全員が、1人前の戦闘力を持ち、しかも連携済み。
多様な戦術、多様な人格、そして――“自分だけのチーム戦”。
おまけに本人は後方支援しながらひたすらしゃべってる。
「つまりぃ〜〜〜ッ!!」
高笑いと共に、本体が空から手を広げた。
「この物語って……一毬のためにあったんですね〜〜〜っ♡♡♡」
……いや、違う。
その瞬間、護井会の観測端末に異常な読影が走る。
自己認識過多。過信指数オーバーフロー。
警告:統合モード突入の兆候。