中層・第14区、モノトーン通り。
いつもは無気力な通勤者と、くたびれた屋台だけが行き交う薄灰色の通りだった。
午前10時8分。
最初に聞こえたのは「ナイスショーーット☆」という、アホみたいな甲高い声。
次の瞬間には、空から女の子(?)が5人くらい降ってきて、街が爆発した。
「――は?」
通勤途中のスーツ男、吹っ飛んできたゴミ箱に巻き込まれてそのまま入院。
その証言によれば、「女の子の顔が全部同じだった」と語っている。精神鑑定中。
「街、壊れてる……え、てか、え、あれ、なに? なんで踊ってんの?」
主婦A(42)は、ガスボンベを背負った“何か”が踊りながら家を吹き飛ばすのを目撃。
現在、精神安定剤で生活中。「アイドル一毬」のライブに当たった模様。
中層の小学校校庭には、バズーカを背負った女が突っ込んできて、運動会の用意を「戦場」に変えた。
「わーい♡ 運動はですねぇ〜〜、こうやって筋肉で語るんですっ!」
体育教師(33)は腕を骨折、生徒の一部は軽度のPTSD。
中層TV局・生放送ニュース。
「只今、第14区で“暴走魔術師による被害”が――えっ、なに、上空から……!?」
映像:上空から笑いながら落下してくる「幼女型一毬」。
そのままスタジオ直撃。爆発。放送中断。以後、「災害」と認定され、報道規制。
地下シェルターに避難した市民たちの間でも、ざわめきは収まらない。
「……マジであれ一人なんすか?」
「うん。しかも、あれが本気じゃないって、護井会の奴ら言ってた……」
「死ぬしかないやん……」
中層の片隅、焼け落ちたコンビニの冷蔵庫の裏に、震える高校生。彼は手に持ったスマホで呟いた。
「#中層終わった #一毬様マジ勘弁 #チートすぎるだろ」
「#でもちょっとだけかわいいと思ってしまった自分を許さない」
彼らは見た。
一人で、街を壊し、笑いながら進軍する女の子。
彼らは知った。
この世界に、“止められない存在”がいることを。
そして願う――
せめて次の区画が、自分の住んでる場所じゃありませんように。
──この日、中層市民たちは学んだ。
「魔法というものは、
使える奴に使われたら地獄だ」ということを。
コメント
2件
今回も神ってましたぁぁぁぁぁぁあ!!!! 一毬たん落ち着いてぇぇぇ!!どうか止まってくれぇ!!! 中層めちゃくちゃだよ...ほんとに一毬様マジ勘弁ですわぁぁぁ... でも可愛いのは分かる、それは事実!!!(?) どうなるんだこれ...() 次回もめっっっっさ楽しみいいいいいいいいぉ!!!!