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「彼女が生まれた日のことなら嫌と言うほど覚えていますよ」
12月16日 9時ちょうど 月はほとんど、いや、全くと言っていいほど見えなかった
小さな病室に赤子の声が響いていた
「元気な女の子ですよ」
「よく頑張りましたね」
「もう大丈夫ですよ」
「抱っこしてみてください」
「おはよう、ゆき、おはよう、」
「あぁ、ゆき、よかった、生まれた、無事だった、」
この世の終わりのように泣く看護師達、宝物を抱きしめながら横たわる母親、
横で母親の手を握る親族達、
12月16日 9時ちょうど 月は殆ど見えなかった
そんな日に女の子が生まれた
田村ゆき 中国人の母と日本人の父の娘としてこの世に生を受ける