続き
⚠️軽度の首絞め
アオセンが気を失って3日経った。あの日のうちにアオセンはうなされることが無くなったが、ずっと死んだように眠っている。
このまま目を覚まさなかったら…と、嫌でも考えてしまう。市長もなにか調べていたが、ただ長い夢を見ているだけで歪みではないらしい。
なのに、アオセンの身体の熱はどんどん奪われていく。手足の先からゆっくり、じんわり蝕まれている。明らかに身体の冷たい面積が増えている。このまま全身が冷たくなったらそれこそ死体だ。
俺らを焦らすように冷たくなっていくアオセンの身体は、怖いくらい脱力していた。
つぼ浦「…ッアオセン!!起きてんだろほんとはさぁ!!!ドッキリなんだろ!?!?…なぁ…アオセン、俺になにを隠してやがんだ…」
そう問いかけた時に、アオセンの喉からヒュッと音がした。
目を開けたらあたりは真っ暗だった。地面は砂で、周りは海水。空からの光も届かないぐらい深いところのようだ。
背筋がヒヤリと冷える。もしこのまま1人だったら。もしこのまま二度とつぼ浦の顔も見れないままなら。
きっとこれは夢だ。俺の不安を表すような夢。
少し遠いところから俺を呼ぶつぼ浦の声が聞こえる。なぜか声が聞こえる方向に行かなければ、と思った。
海水のせいか、進む足はなにかに反発される。歩きづらく、疲れやすい。それでも、進み続けなきゃいけない。俺は現実を見なきゃいけない。現実を見たいんだ。
少しずつ、少しずつ、不安が大きくなるのを感じながら足を進める。
真っ暗なはずなのに、目の前が急に明るくなった。それと同時に、肺が水で満たされていくような気がした。
青井「ヒュッ…げほッけほ…」
つぼ浦「…アオセン?」
アオセンが急に目を覚ました。胸を押さえてなにかを吐き出そうとするように咳き込んでいる。かと思ったら、急にアオセンが自分で首を絞め出した。
つぼ浦「!?アオセン!!!アオセンおい!!!!やめろ!!!!!」
青井「げほっ…けほけほ…夢、じゃ、ない…?生きてる…?おゎっ」
本当に怖かった。まだヒヤリとしているアオセンの肌に、生きているのか不安になって抱きつく。
…心臓がトクトクと弱々しく鳴っている。まだ危なっかしいが、ちゃんと起きている。
つぼ浦「…良かった゛…アオセンのバカ゛ヤロー゛…グスッ」
青井「…つぼ浦」
俺を呼ぶ声が、嫌に愛らしく、冷たい感じがした。
つぼ浦「…なあアオセン…なにがあったんだ…?あんなになるまでなんで…誰にも話さなかったんだ?」
俺がそう言うとアオセンは、先ほどまでこの状況をあまり理解していなさそうに開けていた口を、つぐんでしまった。
つぼ浦はズビズビと鼻を鳴らし、サングラス越しに見える潤んだ瞳が俺を見つめる。
…なにがあったんだとか、元凶に言われてしまってもしょうがない。
俺は、なにも言えない。
青井「…つぼ浦には関係ないよ」
つぼ浦「ッはァ!?!?てんめ゛っ…俺がどれだけ…ッ!!!」
つぼ浦は立ち上がり激昂する。
青井「そんな怒んないで、あ、ちがうな。…殴ってもいいよ、俺のことちゃんと怒って。」
つぼ浦「…は?」
何を言っているんだ、こいつは。
言っていることは全く理解できない。が、いつもはヘルメットのせいで見えない、俺をジッ…と見つめるその顔が、嬉しそうでもあり悲しそうでもある。
アオセンの瞳は、こんなんだったっけ。こんなに、吸い込まれるような。瞳孔を見れば見るほど引き込まれる深海のような瞳。何かが違う、
つぼ浦「…あ、う゛ッ…」
瞬間、脳に激痛が走る。ザザザ…と脳内に不快な音が鳴り響くと同時に、記憶がなだれ込んできた。
アオセンとは対照的な鮮やかすぎる夕焼け。
オイルリグのヘリポートに突っ立って、俺を見ている青鬼のヘルメットの男。
ずっと忘れていた。思い出さないようにしていた記憶。ちょっと思い知ってくれれば、と思ってドッキリをしかけようとした。
本来持ってくるはずのなかったグレネードを握りしめて、「あぁ、コイツの目の前で破裂したら、どうなってしまうだろう」と思ってしまった。たった一瞬の気の迷いがグレネードのピンを引き抜いていた。
アオセンを巻き込みたくはなかったから、いっそ俺が盾になってやろうと思って。ギュッとグレネードを胸に押し当てた。
グレネードが俺の肉体を粉々に砕いて、破片と一緒に飛び散っていった意識。気づいた時にはなぜかリスポーンしていた。
きっと歪みの一種だろう。
一つ一つ鮮明に思い出していく。
耳が心臓の鼓動を感じ取るほど、激しい動悸がする。
つぼ浦の体に異変が起きていたのは一目瞭然だった。
急に倒れ込み、苦しみだし、呼吸もままならない状態。
フラッシュバックするあの景色。嫌だ、またお前がめのまえでしぬなんて、
青井「…ッつぼ浦っいやだ、おいてかないで!!こわい!!!」
いやだいやだいやだ、しなないで、もう見たくない、苦しむお前なんて、
何も考えず、ベッドから降りてつぼ浦を抱きしめていた。大切なものを守るように、独占欲を顕にして力強く抱きしめる。
気がついた時には、つぼ浦はすでに落ち着いていて、俺の頭を優しく撫でていた。
つぼ浦「…もう大丈夫だぜ、アオセン」
青井「…あ、…ごめんね。」
全部思い出した。アオセンと俺がどんな関係だったかも、今までのことも。
アオセンが今までしてきた行動の意味は分からない。だが、今、アオセンが罪の意識に苛まれているのは事実だろう。こんなにもアオセンが、過去の出来事のせいで苦しんでいる。
あの時ずっと俺には素っ気なかったあのアオセンが!
惨く醜い、本来誰も幸せにならないはずの状況なのに。俺は心臓の高鳴りを感じた。
これからの展開を書き溜めていたのを忘れてました。今日はちょっとだけ時間がありまして…せっかくなのでちょっと書いて出すことにしました。
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