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返事をしていなかった事を思い出し、必死で言葉を探す。
「別に、…刀、返せよ、……。」
そう答えるので精一杯だった。言い終わると、くるり、と背を向け、死体場の出口へ向かう。出口の扉を開け、出て行こうとすると、耳元で囁かれた。
「ごめんね〜、はい、刀。」
「!?」
「ぁは、大丈夫?びくってなったよ、」
そう言いながら刀を差し出し、ぁは、と笑う。そんな姿を見つめながら、俺は思った。こいつには、蘭の花が一番似合うんじゃないか、と。急に花の話なんて変だが、俺は確かにそう思った。
「…灰谷、」
と呼ぶと、灰谷蘭はきょとん、と目を見開いた。
「!…三途から名前呼ばれるの久しぶり、かも。」
「ぁは、嬉し♡
でも、俺のことは《蘭》って呼ん
で?」
「……。」
露骨に嫌そうな顔を表現すると、ふ、と笑い、
「〜、−~〜、♪」
「ね、?」
何故「ね、?」なのか分からないが、まァ良いだろう、と思う。
「……蘭。」
「!やっと呼んでくれた♡
これからはずっと、《蘭》
ね〜、」
と言い、ぁはは、と笑った灰谷蘭を、俺は何も言わずにじっと見ていた。
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