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⚠︎注意⚠︎
・眉ラン
・不穏・暗い
・明るい終わり方をしません
・現代の関係的
・独i立
・何でも許せる方向け
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ある大雨の日だった。雨が降ってばかりのイギリスでも、珍しい程の大雨の日。その4カ国は、建物の中、ある宣言を下される。
「今ここに、スコットランド、北アイルランド、ウェールズの3カ国の独立を宣言する」
今日この日、上記3カ国は、イギリス及びイングランドから独立した。
イギリス国家は終わりを告げたのだ。
各方面から拍手と歓声が上がる。名を言われた3カ国の重要機関の人々は、駆け足でその国の実体化である人物に駆け寄り、「やりましたね!」だの「これで自由です!」だのと、歓喜の声を上げている。
しかし、当の三人は、特にこれといった表情をうかべていなかった。
駆け寄る人々に簡単な返答はすれど、笑ったり、喜んだりなどの表情変化は見せなかった。
そして、元弟であり支配者であったイングランドも、目立った行動をとることは無かった。
周りに流されるまま拍手をし、部下達からの言葉に返事をするだけ。
たったそれだけ。
悔しがるなんてせず、ただ静かに、窓越しに降る雨を見つめていた。
◇◇◇◇◇◇◇
「ようやくお前との兄弟関係が無くなるなんて、清々する」
建物から人が居なくなると、スコットは嘲笑いながら、イングランドにそう告げた。
そんなスコットに、イングランドも又笑い返し、
「それはこっちのセリフだ。もうお前らに気を使う必要も無ければ、へりくだる必要も無いなんて、願ったり叶ったりだ」
互いに互いの癪に触りそうな言葉を吐いて、相手の顔を歪ませようとする。
そんな、何時ものような光景を前に、北アイルとウェールズは眉尻を下げながら笑ってる。
「もー二人とも睨み合うなって!」
「そーだよ!いーくんも、強がんないの〜」
揶揄うようの間に入ると、二人は小さな舌打ちをしながら会話を辞めた。
「そうだ、ウェールズ」
独立した以上、兄弟関係が無くなり、以前イングランドが使っていた「兄上」という呼び名も無くなる。
それを、ウェールズも分かっていながら、自分を名前で呼んでくる元弟に慣れなかった。
なぁに?なんて幼い子供に接するように返答すると、イングランドは少しの間を開けてから答えた。
「今日からは、その呼び方はやめだ」
冷たく、突き放すような声色と瞳に、ウェールズは驚いた様にして目を見開いた。
「なんで…?」
驚きながらも、何とか笑顔を保ったまま、ウェールズは首を傾げた。
ウェールズの横にたっていた北アイルも、不安そうな目でイングランドを見る。
対するイングランドは、まるで人形ののうな、感情の薄い瞳をしていて、横に立っているスコットは、何かを理解したような目をしていた。
「なんで…?寧ろ、そのままでいいと思っていたのか。俺がその呼び名を許したのは、兄弟関係があったからに過ぎない。それがない今、そんな馴れ馴れしい呼び名をされたくは無い」
元兄を映した瞳が揺れる事は無い。瞬きもせず、ずっと、冷たい眼差しがウェールズと北アイルを捕らえ続けた。
「今はもう他国に過ぎない。いい大人なら、きちんと割り切るんだな」
イングランドはそれだけ言い残して、雨の中へと消えて行った。
残された元兄だけが、静まり返った建物に取り残された。
まるで川を流れていくように過ぎ去った時間に、二人は放心したままだ。
「相も変わらず強がりな奴だ…」
何を思ったのか、スコットがそうボソリと呟いた。
そして、そのまま続ける。
「ウェールズ、お前も、イングランドがああなる事を予想してなかった訳じゃ無いだろ。アメリカの独立の件を見てたんだ。諦めろ、ああなったあいつは、時が過ぎるのを待つしかねぇ」
四人の中でも、物事の区別、必要か不必要かをキッパリと割り切る事の出来るスコットは、何も苦労することは無いとでも言いたげな顔つきでそう言った。
しかし、二人はそうでは無い。
二人は、スコットやイングランドの様に、関係を簡単に断ち切る事が出来ない。
どうしても、以前の関係と同じ様に振舞ってしまう。
「…無理だよ、俺やのんくんは、スコくんやいーくんみたいに、割り切れない」
悲しい顔をしたウェールズの言葉は、より勢いを増す雨によってかき消された。
◇◇◇◇◇◇◇◇
それからしばらくが経って、イギリス国家が消滅して以降初の世界会議が開かれた。
以前のように連合王国でない以上、今まではまともに会議に参加してこなかった三人も、世界会議に参戦してきた。
しかし、その顔は明るいと言えるものではなく、以前は太陽のように明るかった表情は、自国の天気の様に曇っていた。
イングランドとすれ違いう時も、言葉を交わすことはなく、ただ寂しい顔つきが増すばかり。
そんな様子を、他国も心配そうに見詰めていた。
◇◇◇◇◇◇◇
世界会議が終了した後に行われる、恒例の二次会。
イングランドはカナダと、スコットはポルトガルと共に他の店へと行った。
ブリテン島で残っている国は、ウェールズと北アイルのみだった。
「そんな顔するなら、独立しなきゃ良かったのに」
流石に見かねたのか、フランスがワイン片手に声を掛けた。
フランスの言葉に反応したのは、ウェールズだった。
「俺は別に、独立なんてどうでもよかった。でもさ、俺達は国だよ。国民が望むなら、そうしなきゃ行けないんだよ」
そう、ブリテン島に存在する国も、大陸に存在する国も、その世に存在する国は、国なのだ。彼らは皆、国体だ。
一見すれば頂点に見える立場の彼らは、思っているよりもずっとそこの立場に居るのだ。
国体が望む関係と、国民が望む関係が一致しなければ、優先されるのは国民の望みである。何故なら、国民なくして、国体は存在できないのだから。
したがい、例えどれだけウェールズや北アイルが独立を拒んだとしても、国民が独立を望む限り、泣く泣くOKの返事を出すしかない。それしか出せないのだ。
「…スコットの作る料理が好きだった」
気まずさのせいか、沈黙が流れていた空間に、北アイルの悲しげな声が響きた。
「イングランドが綺麗にしてくれる部屋が好きだった。イングランドを甘やかすのが好きだった。ウェールズと歌うのが好きだった。俺とウェールズが悪ふざけして、スコットとイングランドに叱られる時間が楽しくて、好きだった。四人でテレビ見て、チェスやって喧嘩して…俺、思ってたよりずっと、四人の時間が好きだった」
それは、きっとこの先、叶うことの無い、見れることも無い、笑顔に満ちていた時間の記憶。
イギリスとして存在していた時の、楽しげに満ちた時間。
もし自分達が国のトップとして存在できていたら、まだ続いていたかもしれない時間だった。
「…スコットやイングランドみたいに、すぐに割り切れる性格なら良かったのに」
ウェールズか北アイル。どちらが呟いたか分からない言葉が、店内を駆けた。
◇◇◇◇◇◇◇
そのバーは酷く静かで、見える人影は店主を合わせて三人分だけの、少し寂しき空間だった。
「最近、よく眠れるんだ。家が静かだから」
お気に入りのお酒が入れられたグラスを傾けながら、スコットが遠い目をして、隣に座るポルトガルに向けて言った。
「それは、良かったやん。お前、静かなん好きやろ?」
スコットの心情を知ってか知らずか、ポルトガルは何時もの様に笑いながら回答した。
「好きな、筈なんだがな…」
元の性格では、騒がしい所が余り好きでは無く、どちらかと言えば家で静かに過ごしたい筈のスコットが、寂しそうに呟いた。
スコットは、顔や行動に出していないだけで、内面では、みなが想像するよりも、兄弟という関係が無くなったことを寂しく思っていたのだ。
「ずっと騒がしかった日常が、いきなり静かになって、違和感だらけだ。落ち着かない。静かに眠れていいはずなのに、起きてもスッキリした感じがしない」
グラスの中にある氷が、少し解けたのか、カランという音を立てながら動いた。
その氷の動きが、スコットの今の内心の様に、ポルトガルは感じた。
心の隅に感じる寂しさ。スコットは、それを自覚しないようにしていた。自覚すれば、より寂しくなると分かって居たから。
「何でこんなに、寂しいんだろうな」
氷によって冷えたグラスから手を離し、スコットは机に伏せこんだ。
何時になく大人しく、弱々しいスコットを見て、ポルトガルは何か言うわけでもなく、そっと癖のある髪を撫でた。
何時もなら、辞めろと言ってすぐに振り払ってくる手は、出てくる事は無かった。
◇◇◇◇◇◇◇
「イギリスさん!飲みすぎですよ!そんなんじゃ明日にひびきますから!」
薄らとした照明に照らされた店内に、カナダの控えめな声が響いている。そのカナダの横には、浴びるように酒を飲むイングランドが居る。
しかし、その顔はこれといって火照って無く、酔っている様子は見受けられなかった。
「カナダ…何度も言ってるだろ。俺はもうイギリスじゃない。その呼び方は辞めてくれ」
何時もならとうに酔いつぶれているはずの量の酒を飲んだ筈なのに、イングランドの声はハッキリとしていた。
これっぽっちも、酔っていないのだ。
「イギリスさん…大丈夫ですよ、きっと何時か元のような関係に戻れますよ。ほら、アメリカともなれたじゃないですか」
何か暗いものを背負っているように見えるイングランドの背中を、カナダは優しくさすってくれた。
「…戻るつもりは、無いんだ」
それはまるで、誰も受け付けない、売れいれないという意思が込められていて、弱く、そして強い声だった。
「俺はもう、誰かと同盟を組んだり、親しくなるつもりは無い」
完全なる孤立を目指すかのような発言に、カナダは慌てた。
「な、何でですか!?」
イングランドの背中をさするのも忘れ、カナダは勢いよく席を立った。
「俺は、誰も繋ぎ止められない。俺が手を取ったところで、何時かは消える。それはもう、充分なんだよ…」
今にでも泣き出してしまいそうな声は、カナダの言葉さえも飲み込んでしまった。
カナダは、国体の中でも一二を争う程に、イングランドという国体を強く思っている。それは「大英帝国の忠誠な長女」という名が着くほどに。
イングランドの幸せを強く祈り、願い、そして支える。イングランドが嫌なことは、嫌でいいと言う。
そんなカナダだからこそ、何も言えなかった。
イングランドには、笑顔になって欲しい。その為には、他国との関わりは必要であり、同時に不必要なのだ。
この先の為で行くなら、必要だ。しかし、イングランドという国体の心を見た時、これは不必要に変わる。
でも、もしここで、カナダが何かの声をかけても、未来が変わることはきっもないだろう。
イングランドという国体は、恐らく、本当にこの先、誰とも親密な関係にならないだろう。
イングランドという国体は、解かれた糸を結び直すことをしないのだ―――
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近年、イギリス国家の消滅が危惧されていますね。もしそれが本当にそうなった場合、この四人はどう思うか。
仮に全員、顔に出さなくとも悲しみはするのではと思います。
嫌々言いながら、結局、四人は兄弟という関係を好いていると私は思っています。
良ければ♡お待ちしております。
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コメント
3件
うはなきました文才ありすぎじゃないですかね