あの後、芥川と話を終えた太宰と倒れている三人を連れて探偵社へと向かった。
「そう云えば、芥川君と何話してたの?」
と、太宰に質問を投げ掛けると彼はニッコリと笑みを浮かべ応えた。
「君の懸賞金についてだよ」
「え、そんなん懸けられてるの私?」
謂わぬ解答に固まってしまう。
「まあ、舞は可愛くて良い子だからねェ」
「太宰それ幾らだった?僕買ってくる!」
「ちょちょちょ、私モノじゃないです!」
そんな私に、横から与謝野女医と乱歩が話しかけて来る。
「…マジで誰だよ…そんなモン懸けたの…ほんと悪趣味」
「そうかなぁ?」
「悪趣味だろ」
惚けたように此方を見てくる太宰に、自分みたいなのに懸賞金…というか人に懸賞金を懸けようとする時点で悪趣味だろうとげんなりしてしまった。が、それと同時に懸賞金を懸けてきそうな連中が思い浮かんでしまい、更にげんなりしてしまった。
「次会ったらぶっ飛ばす…」
あんな奴らと関わらなければ良かったと後悔をしていると、与謝野さんが頭を撫でて慰めてくれた。
「そんなに落ち込まなくても大丈夫さ。妾たちが守るから」
「うぅぅ…与謝野さぁん」
((女子になりたい…))
舞を抱き締め頭を撫でながら、ザマァと勝ち誇った笑みを浮かべる与謝野女医に男性陣は羨望の眼差しを向けている。
「くーにきーださーん」
と、虎の子と谷崎兄妹の様子を見に病室の扉を開ける。
「おぉ、舞か。久し振りだな。どうした?」
「怪我人の様子見ー」
国木田にそう云うと、ベッドの側まで近付いた。
「おはよ。怪我の具合はどーお?」
「えっと、君は…?」
戸惑った視線を向ける彼に、自己紹介がまだだったことを思い出す。
「あー、自己紹介まだだったか。私の名前は神楽舞。よろしくね」
「舞がお前の怪我を治してくれたんだ」
と、国木田が付け加えると虎の少年は驚いた表情を浮かべ、慌てて頭を下げた。
「あっ…有難う!」
「んーん、どういたしまして」
素直な彼に、にこにこしながら言葉を返す。
「…っと、じゃあ君の名前は?」
「僕、中島敦。よろしく、舞ちゃん」
「敦君ね。よろしく」
まだ聞いていなかった彼の名前を聞き、握手をすると彼は急に辿々しくなってしまった。
「ありゃ、人見知り?」
「…その鈍感さは変わらんな」
「えー、何それ」
国木田の御尤もな意見に、良くわかっていない舞は納得出来ないという表情で頬を膨らませている。
それにしても敦は、舞“ちゃん”とちゃん付けをしているということは彼女の事を歳下だと思っているのだろう。だが、舞は歳下扱いにはもう慣れているために何も言うことはなかった。
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