「姉ちゃんそれ迷ってるなら2つ頼みなよ。で、いらない方俺食べるから 」
「あんた食べたいのないの?」
「俺はなんでもいいから」
「わかった、ありがとう」
あの時から、
あの、たった数日の出来事から
俺は”選択”をすることが怖くなった
たった1回の”選択”で
大切な人、大切なものがなくなってしまう
あの時24だった俺はもう26になっている
我ながら少し、いや、結構成長出来たと思う
あれから俺は ちゃんと就職した
もちろん姉ちゃんの手伝いはしている
俺はあの日からなるべく普通に過ごそうとしている
俺が25の時に”血の池事件”がぽつりと止んだ
きっとみんな沼男になってしまったんだろう
このことを知っているのは俺、ミミちゃん、太陽、そして、藍美さん、春くらいなのだろう
今、連絡を取れるのはミミちゃんくらいだ
ミミちゃんはあれからずっと大切な人を探している
定期的に事務所にお邪魔しているが
最初に会った、
馬久留さんの家で会った時より随分痩せていて、元気もなくなったように思う
21歳にもなり、それなりに出会いもあるはずだ
しかし、春から夏になり、秋、冬とすぎても
“卯月 春”が
“春”がやってくることをずっと待っている
俺は春と連絡が取れる立場にいる
だが、メッセージを送ってもそれを見るかどうかは分からないし
春から送られてくるメッセージもミミちゃんのことを気遣うことばかりで
近況報告などがない
つまり場所の特定、どこにいるかなどはさっぱり分からないのだ
噂で聞いた話だと鐘有馬久留の奥さん、つまり藍美さんは再婚し、今は幸せに暮らしているとの事
その藍美さんの旦那さんは黒い髪に赤い目が特徴の男だとか
完璧に太陽の特徴に一致しているから2人は幸せに暮らしているんだろう
それぞれがそれぞれの”選択”をし、
その運命に沿って今も生きている
たくさんの”選択”から後悔のない”道”を選ぶのではなく
“選択”をした、その”道”を選んだからには
後悔のないように頑張るしかないのだと
あの日、俺たちは学んだのだ
「ミミちゃーん」
「ぁ、平太。いらっしゃい、」
「ケーキ買ってきたから食べよ」
「うん、ありがとう」
ミミちゃんが出してくれた紅茶と一緒にケーキを食べながら俺は聞く
「最近はどう?」
「、分かんない、、春は、、来るのかな、」
「、こればっかりは俺にも分からないな」
「っ、 」
「でも、ミミちゃんが信じた相手なら大丈夫じゃないかい?」
「そう、、だよね」
「すぐ泣かないの。可愛い顔が台無しだよ?」
「うん、、平太、キモおじみたい」
「な?!」
「ふふっ笑」
「、やっぱり、ミミちゃんは笑ってる方が似合うよ」
「ありがと、」
少し照れくさそうにミミちゃんはそう言う
改めて見ると少し隈が濃くなっていて寝れてないことがわかる
事務所のことから春のことを探すことまで
警察の手を借りながらだが
ほぼ一人でやっているのだ
寝れてなくても当たり前だ
でも、心無しか最近は笑うことが多くなったと思う
それがとても嬉しくて、少し余裕が持ててきたのかなと思う
ピロンッ
「あ、俺だ」
確認すると今の話題の中心
春から連絡が来ていた
[事務所の場所ってずっと一緒?]
そんな一言
だけど今の俺にはすごく嬉しくて
[そうだよ]
すぐそんなことを返していた
「誰から?」
「、、春」
「ぇ?」
「春だよ」
「え、な、なんて、?」
「事務所の場所変わってないか?だって」
「ぇ、ぁ、春…春が、、」
ミミちゃんはすごく困惑していて、
でもどこか嬉しそうで
また、気づけば泣いていて
本当に、心の底から嬉しいことがこっちにも伝わってきた
「多分すぐ来るよ、あいつの事だから」
「そうかな」
「きっとそうだって」
「春かぁ…、!」
ガチャ
「ぇと、た、ただいま、?」
「っ、春ッ!」
ドアの開いた音がした瞬間
ずっと探してた人の声がした
大切な人
忘れたくない人
大好きな人
そして
愛してる人
ずっと素直になれなかった
強がっちゃって
自分に素直になれなかった
でも、
今だけは
この瞬間だけは
自分に素直でいたい
私は彼の姿を認識すると
体が勝手に動きだしたかのように
彼に抱きついた
「どこ行ってたのッ、」
「ごめん、」
「ずっと、心配してたんだよッ」
「心配かけてごめん」
「ばかぁッ」
「勝手に、いなくなってごめんね、」
「っでも、!帰ってきてくれてッ、ありがとうッ」
「っ、遅くなって、ごめんッ、待っててくれてッありがとう」
私も春も子供みたいに泣きじゃくった
ずっと溜め込んでた感情が溢れ出して
止まらなくなった
その感情の名前は
“愛”
だった
春が帰ってきた瞬間
ミミちゃんは春に抱きついた
青春
なんて歳じゃないのかもしれない
だって21と18だ
それでもいいのだ
彼らの心はまだ青春を楽しんでいる
ミミちゃんはたくさんの”愛”が溢れ出している
春だって申し訳なさそうではあるがどこかほっとした表情を見せている
結局どちらもお互いが心配でたまらなかったのだろう
会えなければ会えないだけ膨らんでいくのが愛情と言うが
まさに今この目で見ている2人はお互いを大切に思い
愛情を注いできたもの同士なのだろうと
感じざるを得なかった
全員がハッピーエンドを迎える結末などこの世にはないのだろうか
そんなことは無いと思う
終わりを迎えたあと
例えその”終わり”がバットエンドだったとしても
その後も物語は続いていく
その先にある物語が幸せなものならば
それはハッピーエンドなのでは無いだろうか
この物語は
自らについて考え選択し
道を選び
後悔のないように目いっぱい楽しみ、悲しみ、時に喧嘩した
そんな物語だ
今あるこの瞬間を大切に
未来を信じて歩み続けた少年少女達は
将来の大切な宝だ
それが例え些細なことでも
“血の池事件”なんて物騒な話から始まった物語でも
途中で挫けそうになっても
それでも
今
この瞬間
お互いを愛し合って
信じ続けた
その事実が大切な宝なのだ
卯月春と地獄ミミだけじゃない
騨平太も黒沼太陽も鐘有藍美も
みんなが選択し歩んだストーリー
そこには感動と学び
そして
お互いがお互いを尊重し話し合い
自らの進んだ道を後悔のないように選択し歩んでいくこと
そんなことが残されたのだ
長文を読んで頂きありがとうございます
まずはお疲れ様です
ここから先は読まなくても大丈夫です
この物語は
【クトゥルフ神話TRPG】我々の奇妙な日常『沼男は誰だ?』
の二次創作となっております
この配信にはたくさんの感動が詰まってます
是非見たことがない人は見てみてください
私はこのアーカイブのコメント欄の
《我々は変わるが、日常は変わらない》
というコメントが好きです
このコメントを見てこの物語を思いつきました
登場人物は主に「騨平太」「地獄ミミ」そして「卯月春」です
彼らは後日談がハッピーエンドではなかったのかなと思います
バットエンドという訳でもなかったと思いますが
しかし、私はミミちゃんの後日談を見た時に
春ミミには幸せになってもらいたい
と思いました
そこでこの内容の物語が産まれました
最後になりますが
後悔のないように選択をする
というのは間違いだと思います
その選択をしたからには自分で後悔のないようにその道を進んでいくのです
後悔のない人生は無いです
怪我のない人生なんて楽しくないじゃないですか
怪我をしても少し休んで
時に走って時に歩いて
たまには遠回りとか近道とか
たくさん選択肢はあるのです
楽しく行きましょう
1度きりの人生
自分だけの人生です
自分の人生は自分が主人公
自分が楽しいように生きるのが1番ですよ
ここまで読んでくれてありがとうございます
またどこかで会えたらいいですね
では
ありがとうございました
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