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「君、大丈夫?」
初めてだった
そんなふうに声をかけてくれたのは
同級生からも身内からも見捨てられ
道端で蹲っていた俺に
優しく声をかけてくれた君は
あの時
天使に見えたんだ
俺は”フツウ”とは違っていた
フツウじゃないとは言っても
喋り方が少し片言になってしまうことぐらいだ
それでも
誰かを敵にして群れていかないと生きていけない人間という生き物からしたら
俺を標的にするには有り余る理由だった
結局同級生からは
それだけで此奴は障害者だと虐められ
身内からはどうしてフツウに出来ないのと
“フツウ”を強制させられてきた
フツウを求められたところで俺に分かるはずがなく
時に暴力を振るわれた
気味悪がられ居場所をなくし
気づけば見知らぬ所にいた
もう何日も食事という食事をしていなく
とてもお腹がすいていて
歩けるような気力も残っていない
道端で蹲ることしか出来なくなってしまった
そんな時だった
「君、大丈夫?」
声をかけてくれた人がいた
その人は
青いニット帽を被っていて赤いマフラーをつけた
吸い込まれそうな瑠璃色の目をした人だった
「エット、、」
上手く言葉が出てこない
長らく喋ることすら許されない環境にいたせいで
喉が声の出し方を忘れているような
そんな掠れた声でしか喋れない
それに加えて元々人見知りだということもあり
人と喋るということに慣れていないという根本的な問題もある
上手く話せずしどろもどろになっていると
瑠璃色の目をした人が口を開いた
「ねぇ、君、一旦家に来なよ」
そういうとその人は俺に目線を合わせた
俺は戸惑いながらも頷いた
「嫌かもしれんけどちょっとおんぶするね
君、歩けそうにないから」
そういうと彼は俺に背を向けた
俺はその背中に乗っかった
そして彼は彼の家があるであろう方向に歩いていった
正直おんぶしてもらうのは恥ずかしいが
歩けそうにもないので助かった
第一、こんな傷だらけでここまで歩いて来たことですら奇跡ではあるのだ
身内や学校という存在から離れたい一心で歩いてきたから
その時には疲れを感じていなかった
しかし
彼の背中は何故か落ち着く
このまま身を預けて寝てしまいたかったが
さすがにまだ知らない人なので
寝るのはやめておいた
彼の家に着いた
ここに着くまで一言も話さなかった
俺のさっきの掠れた声で察してくれたのか
無理に話させようとはしてこなかった
ただいま、と彼が言った
そういえば鍵も空いていた気がする
何人かで住んでいるのだろうか
いや
家族がいるのならそれもおかしくは無いのだが
自分の環境的にそんなことに対して嫌悪感を持ってしまうから
それが当たり前だとは思えなかった
「おかえり」
そんな声がして奥から暖かい雰囲気のある真紅の目をした人が顔を出した
「その子、どうしたの?」
そんなことを聞いてきた
そりゃあそうだろう
急に一緒に暮らしている人がまだ未成人に見える男をおんぶしてきたら
誰だってそんなことを言うに違いない
「おかえり、とりあえずその子の手当しようか」
幻想的な桔梗色の目をした人が声をかけながらこちらによってきた
「うん、ソファに連れてくから救急セット持ってきてちょうだい?」
「おっけー」
そういい、瑠璃色の目をした人は俺をリビングまで運んだ
リビングからはキッチンが見え
キッチンにはまた一人
鮮やかな菜の花色の目をした人が料理を作っていた
「おーおかえり、誘拐か?」
「んな事俺がするわけないでしょー
人助けよ、人助け」
菜の花色の目の人と瑠璃色の目の人はそんなことを話していた
瑠璃色の目の人は俺をソファに座らせてくれた
そのうち真紅の目の人は俺に水を差し出してくれた
有難くそれを受け取った
以外にも喉は水分を欲していたようで
コップの半分程度の水を体内に流し込んだ
「傷口見せてくれる?」
桔梗色の目の人が俺に聞いてきた
断る理由もないためフードを取って袖をまくった
その瞬間その場にいた4人の人達が苦しそうな顔をしたのがわかった
きっと俺の傷が痛々しく感じたのだろう
俺自身はもう慣れてしまってなんとも思わないのだが
やはり
この傷は他人から見たら痛々しいものなのだろう
そこでやはり俺はフツウとはかけ離れた存在なんだと再確認してしまう
「ゴメン、、ナサイ、、」
気づいた時にはそう口に出していた
何に謝っているのかも分からず
ただ居た堪れない申し訳なさに襲われたから
その気持ちを埋めるため
言うならば自分のエゴのために謝ったようなものだろう
口に出してからそう思う
「なんで、、謝るの?」
瑠璃色の人がそう聞いてきた
そんな事を聞かれても俺には説明ができない
そんなことを言ったら
こんなに優しい彼らを傷つけてしまうことになる
俺はただただ目を伏せてしまった
すると急に温もりに包まれた
それが抱きしめられているのだと理解するのに時間はかからなかった
「、我慢してきたんだよね
頑張れて、偉いね
生きててくれてありがとう、」
不意にそんな言葉をかけられた
俺の心はじんわりと暖かくなってきて
その言葉がしっかりと頭に入ってきた
今日初めて会ったはずなのに
どこか懐かしくて
俺が欲しかった言葉をかけてくれた
「、、アリガトウ」
今度はちゃんと考えて
今の自分の精一杯の気持ち
頬に雫が垂れている気がする
俺は瑠璃色の目の人を抱き締め返した
桔梗色の目の人に手当をして貰って
新しい服を貰った
「そういえば自己紹介してない!」
瑠璃色の目の人が急にそう叫んだ
「うるさいで、近所迷惑や」
「ごめんごめん」
怒られても軽く流すだけで
あんまり反省していないように見える
それでも彼らは楽しそうにいてて
いいなって思った
「俺、らっだぁね
らっだぁとからだおくんとか呼び方はなんでもいいよ」
「ラダオクン、、」
瑠璃色の目の人はらっだぁという名前らしい
確実に本名では無い名前だが色々あったのだろう
彼にも事情があるだろうから
深くは探らないことにした
「俺はみんなからばどきょーとかきょーさんとかって呼ばれとる 」
「キョーサン、、?」
菜の花色の目の人はきょーさんと言うらしい
こちらは本名っぽいが何か触れられない雰囲気を感じた
「俺はレウクラウド
レウさんとかって呼んでね」
「レウサン、」
真紅の目の人はレウさんと言うらしい
こちらも本名では無いだろう
「最後ね、俺はコンタミ
コンちゃんとかって呼ばれてるよ」
「コンチャン、、コンタン、?」
「それでもいいね」
桔梗色の目の人はコンちゃんと言うらしい
こちらも2人同様本名では無さそうだ
俺も自己紹介をしなきゃいけないのだが
生憎俺は本名が嫌いで本名で呼ばれたくない
いっその事この人たちにあだ名をつけてもらうのも手ではないだろうか
「エット、オレハ、、ナマエ、キライダカラ、アダナ、ツケテクレマセンカ」
「え、いいの、!」
らだおくんが目を輝かせた
きっと嬉しいんだろう
何が嬉しいのか俺には分からないけど
「俺はね、君の緑の目が凄い綺麗だと思うんだ
だから君はこれから”緑色”!」
「ミドリ、イロ?」
「うん!」
緑色
単刀直入でそれでいてらだおくんの素直さが分かる名前
「ラダオクン、アリガトウ」
胸が暖かくなった
「じゃあ俺はドリミーって呼ぼ」
「なんで?!」
「そういえば、みどりくん家に住みなよ」
きょーさんとレウさんの会話を聞いていたら突然コンちゃんにそう言われた
俺的には寧ろありがたいのだが
「デモ、ラダオクンタチハ?」
「俺らは全然おっけーよ」
「寧ろその親んとこ返したないわ」
「俺らはいいから、みどりくんに任せるよ
学校のあれもあるだろうし」
確かに学校には行かなきゃないが、、
この4人なら頼めば転校させてくれる気がするし
あの親の元には帰りたくない
「オレハ、ココニイタイ、!」
紛れもない本心だ
俺はこの人たちと過ごしていきたいし
これからも
緑色として生きていきたい
「じゃあ決定!」
らだおくんのそんな声が響いた