“消えないで”
俺が何度も聞いてきた迷惑で自分勝手な言葉。
消えたいと思うくらい辛いことがあるのに消えないで。
大切なら相手の意志を尊重するものだ。
もうこの世界は人間が少ないな。数百人程度だろう。
仲間を持つ人間が、 俺達には理解しがたい人間が知ってる普通があるんだろう。
だから気になる
具体的に問う。
尊重は?自由は?その時にどこへ行くの?
言葉を発する者に問う。
止められなかったときの気持ちは?失うものは?
そして感づいた人もいるだろうが、俺は人間じゃない。天使だ。
天使である俺の仕事はちょっとした世界と死者の管理。
この世界は神様に見放された崩壊寸前の世界。
それでも俺が来る意味。
この世界で生き、死ぬ者の中で転生するやつを決めるためだ。
そして仕事をしている最中に人間からよく聞く”消えないで”。
やっぱり……
『…気になるなぁ…、』
「何が気になるんですか?」
『うわッ?!』
考え事をしていると、茶髪の女の子が俺の顔を覗き込んでいた。
この辺りでは見たことない子だな……?
『…普通に話しかけてくれよ、』
「普通なんて知りません。」
キッパリと言い切りやがった…
まぁ普通なんてものないんだろうけど…
……そういえば人間に化けているから仲間と思って話しかけられたのか。人間は平均的にもコミュニケーション能力が高いからな。
というより、人間の女が生きてるなんて珍しい。
いや…差別的な言葉は良くないんだろうが、肉体的な差というものはあるだろ?
崩壊寸前の世界で力が弱いものが生き残っているというのに違和感を感じただけ。
『……』
「ちょっと?無視するんですか? ねーえー!おーい!!」
『すまん、考え事だ。それで…あんた、名前は?』
「喋り始めたと思ったら急に質問か…、私は__」
『どうしたんだ、?』
「……忘れた、」
『はッ…?』
「わ、忘れちゃった。なんだったっけ?私の名前…… 名前…は…、?」
「ごめんね。覚えてないや… 生きるのに必死だったの。」
まぁ仕方ないか。
こんな崩壊しかけた世界でも。
人間はまだ死ぬのが怖いというなんとも不思議な生き物なのだから。
しかし困ったな…なんて呼べばいいのだろう。
『まぁ、いいか…』
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