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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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松が岬署は、本物のチンピラたちと、チンピラまがいの高校生たちで溢れていた。


その一室の取調室で事のあらましを説明し、迎えに来た保護者にそれぞれが会えたときには、時刻はすでに22時を回っていた。


取調室の前で迎えに来た雅江と抱き合う右京を見て、蜂谷は廊下の壁を滑り落ちるように座り込んだ。


「よう。お疲れ」


その隣に大きな身体が並ぶ。


「危機一髪だったね」


反対側の隣に長い脚が投げ出される。


「くっつくな。暑苦しいよてめえら」


蜂谷はうんざりしてため息をついた。


「お前さ。一人で乗り込むなよ。焼け石に水って言葉を知らないのか?」

諏訪が蜂谷を睨む。


「火に油、ともいうよね」

永月がヘラヘラと笑う。


「うっせえな」

蜂谷は二人を順番に睨んだ。


「でも―――」


諏訪がこちらを見下ろす。


「あいつを助けてくれて、ありがとな……」


「…………」


「あーあ」

永月が振り返る。


「ヒーローも代替わりかー」


「…………」


3人同時に、泣き崩れる雅江の頭を撫でる右京を見上げる。


「――結果的にさ」


永月が口を開く。


「多川ってやつも拉致監禁・暴行容疑で逮捕だしさ。奈良崎ってやつも殺人未遂で逮捕だし。赤い悪魔によって、宮丘の悪は一層されたよね……」


「――それが、よくわかんねぇんだよな」

蜂谷は首を捻った。


「奈良崎が右京の顔を見ても、ピンと来てなかったんだよ。あいつ、本当に赤い悪魔だったのかな?」


諏訪がこちらを見下ろす。


「…………あいつは」


ポツリと言った。


「確かに俺の弟を助けてくれた」


「そりゃ聞いたよ」

蜂谷は諏訪を見上げた。


「その異常な強さから、やられたやつらから、赤い悪魔の噂が流れ出して」


「―――」


「あいつが本格的に宮丘に引っ越して来たらやばいと思って」


「――うん?」


「噂の拡散と攪乱を図ろうと……」


「――ん?」


「俺が赤いウィッグを被って……」


「―――え……!?」


蜂谷が目を見開く。


「諏訪が赤い悪魔?」

永月も口をあんぐりと開ける。


「ついでに、あいつが来る前に目につくヤバい奴らを一掃してやろうと。あはは」


笑いながら諏訪が頭を掻く。


「ーーーーー」


「ーーーーー」


二人は茫然としたまま、一人笑い続ける諏訪から、右京に視線を戻した。




「みんな!じゃあな!ありがと!!」


右京が手を上げる。


「おお!気をつけて!!」


両手をブンブンと振る諏訪の隣で蜂谷と永月は、まだ狐につままれている気分で手を上げた。



雅江が泣きながら頭を下げる。


祖母と孫は2人寄り添うように警察官にならって踵を返すと、松が岬署の廊下を歩いていった。



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