ドォン!!
鋼鉄が弾ける音が響いた。
バルドの全身鎧にヒビが入り、巨体が吹き飛ばされる。
戦斧を振り上げる間すらなく、彼は壁に叩きつけられた。
「――ッ!?」
詩音が驚愕する。
バルドはこの船で随一の武闘派――それが、一瞬で沈められた。
葵が双剣を軽く振るい、微笑んだ。
彼女の周囲には、亡霊たちが渦巻いている。
「ねぇ、バルドくん。君、強いよねぇ?」
バルドは鎧の中で呻いた。
「ぐっ……く……!」
葵はクスクスと笑う。
「でもさぁ、それ、”生物基準”でしょ?」
「……!!」
瞬間、バルドの体がガクンと動かなくなった。
まるで見えない手が、全身を縛り上げたかのように。
葵の目が、血のように赤く光る。
「亡霊相手に、力自慢してどうすんの?」
その言葉とともに――
ズバァッ!!
双剣が交差し、バルドの胴がX字に裂けた。
血飛沫が舞う。
バルドの巨体が、ズズズ……と膝をついた。
詩音が唾を飲み込む。
主も、言葉を失っていた。
葵は軽く髪をかき上げる。
紅に染まった双剣を振り払い、笑う。
「あーあ、こんな簡単に終わっちゃうんだ?」
彼女は無造作にバルドの鎧の破片を蹴った。
冷たい音が、床に響く。
「つまんなーい。」
そう呟く彼女の笑顔は、あまりにも”楽しそう”だった――。