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何やら騒がしい。うっかり眠ってしまったけど、建物ごと無事に転移出来ただろうか。
「アルシノエ姉さま、剣を収めて動かないでください~!!」
「ええい、離せ! お前は戦えないんだからあたしの後ろに下がっていな!」
「違うんです、そのオークたちは違うんですよ~!!」
興奮気味のアルシノエをウルシュラが止めてるような?
「は、早くわたくしたちも止めないと!」
「おいおい、マスターに黙ってオークと戦っていいのかよ?」
「違いますわ! 止めるのはアルシノエさまのほうですわ!」
「ウルシュラさんのアネさんを?」
そうかと思えばイーシャたちも慌てている。何が起きているのか、とにかく目を覚まさないと。
「ルカス~起きてニャ~起きてニャ~!!」
「大変みゃ! オークが襲って来そうだみゃ!!」
ミュスカとミルが俺を一所懸命起こしている。
「んん?」
「ルカス。起きて。ルカスが顔を見せないと、大変なことになる。わたし、アーテルを呼んで来る」
「……アーテル?」
あぁ、そっか。アーテルの雑貨屋のところに来られたんだ。
「ルカス! さっさと起きやがれ! 早くしないとあの大女どもがいらない敵を作ることになるぜ?」
「むむっ!? え? あっ……ミディヌか。大女……アルシノエが何だって?」
「ルカスが顔を見せればオークどもも退くはずだ。とっとと起き上がれ!」
「オーク?」
何だかよく分からないけどミディヌもイライラしているし、言うとおりにしないと。
そう思いながら扉のところに近づくと、
「ちょ、ちょっと! オークたちと何を!?」
オークとアルシノエたちが今にも戦闘を始めそうな光景だ。
「おぅ、やっと起きやがったか。ルカス、お前も参加しな! 目の前のオークどもを一掃すんぞ!」
「ああぁ、ルカスさん~! アルシノエ姉さまを止めてください~! ここのオークたちは敵じゃないじゃないですか~」
敵じゃないオークたち……ということは、ここはセルド村?
ナビナは成功したとか言ってたけど、建物ごと転移してきた場所はオークたちの集落なのか。てっきりアーテルの雑貨屋の隣に移動したと思っていたのに。
「あらあらあら、何てことなのかしら! ルカスさん、どうしてあなたたちがここへ? それにこの見慣れない建物……これがウルシュラが話していた教会?」
そう思っていると、オークたちの群れをかき分けてアーテルが飛び込んで来た。どうやらナビナが呼んで来たみたいだ。
「――で? ルカス。あたしらごとオークの集落に連れて来た理由は何だ?」
アーテルが仲裁に入ったことでオークはすぐに撤収した。興奮状態だったアルシノエたちもようやく落ち着き、アーテルもすぐに戻ってしまった。ミュスカたちやイーシャたちも目を丸くしていたが、俺は冴眼の力を使ってクランごと転移させたことを説明した。
「あのままロッホに留まっていれば、いずれまた帝国の連中が顔を見せて来る。その度にウルシュラが悲しむことになるのは避けたい。それなら教会の建物ごと転移させれば……そう思ってたらここに」
当初の予定とだいぶずれてしまったけど。
「驚きだぜ、まさか建物ごと転移……いや、移転させるとは」
「マスターのそのお力には、わたくしたちも屈する以外にありませんわね」
「い、いや、まさかオークの集落に来るなんて思わなくて……」
空いてる土地が無かったせいもあるかもしれないとはいえ、まさかオークの集落の中央なんて目立ちすぎだ。
「ルカスさん……。私の為にありがとうございますです……!」
「あ、うん」
ウルシュラの俺を見る目が、以前よりもさらに輝いている。もしかしてこの行動で、ウルシュラを完全に惚れさせてしまったんだろうか。
「ちぃっ、妹の為にしたことなら何も言えねえな。それでこの先どうするつもりだい?」
「え、えーと……」
「あたしはともかく、うちの野郎どもは血の気が多い。ましてオークの集落のど真ん中にいればな。あんたからしっかり説明してくんな!」
「もちろんしますよ」
名前も聞いていない戦士たちも巻き込んでしまった。すでにクランメンバーの彼女たちは、俺がしたことを受け入れている。しかしキーリジアの戦士たちにはきちんと説明をして説得しないと駄目だ。
そう思って戦士の彼らに近づこうとすると、
「ルカス。アーテルが呼んでる」
その前にナビナに止められた。仕方が無いとはいえ、またアーテルに怒られてしまうのか。
「分かった。雑貨屋に行けばいいんだね?」
「うん」
オークの集落であるセルド村。それ自体は危険が無いということで、雑貨屋には俺とナビナだけ向かった。