吉田武史はリビングのソファに座り、深いため息をついた。彼の家には、殺し屋の経験を持つ者がいないのに、どこかしら殺し屋を感じさせる日常が広がっていた。
「お父様、今後の計画をお聞かせ願えますか?」
美咲の冷徹な声が響く。テーブルの上に置かれたスマホの画面には、吉田の暗黒時代の証拠が映し出されている。その光景を見つめながら、美咲はまるで自分が新たな支配者かのように振る舞っていた。
「君もなかなか手強いな、美咲。」
「お褒めに預かり光栄ですわ。」
その時、背後から突然、どすん、と音が響いた。振り返ると、翔太が遅れてリビングに登場した。
「よぉ、オヤジ。今日の金、ちゃんとくれよな。」
「うるさい。」
翔太はそのままソファに身を投げ出し、無理にでもリラックスしようとした。だが、何かおかしな空気を感じ取ったのか、美咲の鋭い視線を浴びると、急にそわそわと落ち着きがなくなった。
「おい、何かあんのか?オレにも知る権利くらいは……。」
「お前は黙ってろ。」
吉田は強い口調で言ったが、息子はその視線に少し怯んだ。だが、それもすぐにしれっとした顔をしてまた口を開こうとする。
「お前ら、ホントにどうしようもないな。」
吉田が呟いたとき、突然、リビングの隅から「ニャー!」という鳴き声が聞こえた。
「……またお前か。」
霧島蓮が、何も言わずにリビングの隅からゆっくりと現れた。その姿はまるで、不死鳥のように死ぬことなく甦った、狂気じみたペットのようだった。
「おい、蓮。お前、いつまでここに居座るつもりだ?」
霧島はあくびをしながら、無言でソファに座ると、スナック菓子を一袋取り出してボリボリ食べ始めた。
「まあ、俺は見守ってるだけだしな。自滅するのを見るのも面白い。」
美咲が冷たく睨んだが、霧島は一切気にせずに続きを食べる。
「とりあえず、俺もそろそろ出るとするか。」
吉田が立ち上がると、翔太が慌てて追いすがった。
「オヤジ!待てよ!」
翔太は吉田の腕を引っ張った。
「お前、また金を貸してほしいだけだろ?」
「ちげぇよ、オヤジ。」翔太は必死に言い訳をしようとしたが、その目は完全に嘘をついていた。
「もう、どうしようもないな、お前は。」
吉田は翔太を振り払い、リビングを後にした。だが、もう一度振り返り、最後にこう言った。
「お前ら全員、結局は愚息と愚娘、そして愚ペットだ。」
その言葉を聞いた美咲が、微笑みながら言った。
「お父様、面白いことを言いますわね。ですが、愚者の中で、愚者でない者は……あなた自身ですわ。」
吉田はその言葉を無視し、ただ静かに玄関を開けて外へと向かった。
しかし、心の中で確信した。彼の人生がここまで来たのも、愚息と愚娘と愚ペットのせいだと。だが、いずれ愚かな存在たちが、彼の運命をどこかで引き寄せてくるだろうことも、確かに感じていた。
コメント
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今回も神ってましたぁぁ!!! まあよっしーの家族は相変わらずだわねぇん、、、( てかまじで毎度神すぎてもうすごい最高だ(? 次回もめっさ楽しみやぜ!!!!!!
ぅぅ〜、だんだん難しくなってきたな〜、、、!でも面白いわ〜! 続き待ってます(*´꒳`*)