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世界一美味しいケーキ

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世界一美味しいケーキ

1 - 世界一美味しいケーキ

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2024年06月24日

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目の前にある一切れのショートケーキ、ケーキに立てられた一本の赤い蝋燭の火を吹き消す。

「懐かしいな…」

静かな空間が落ち着かなく呟く。

「何が? 」

数少ない誕生日を祝ってくれる友達の1人、ラブかが聞く。ラブかは幼馴染だ。

「孤児院暮らしの時の、あの不味い手作りケーキを思い出したんだよ」

昔暮らしていた孤児院では、誕生日の子にケーキを作ってくれた。だが、その手作りケーキが信じられないほど不味いのだ。

クリームがどろどろで、砂糖が少ない。苺の数が少なく、スポンジも最悪。この世で3番目に嫌いな食べ物があのケーキだ。1番と2番は知らない。

「あー、懐かしいな。俺直接いらないって言いに行ったら殴られたよ」

「え?馬鹿じゃないの…」

孤児院には、1人すごく厳しい女性がいた(今はきっと老けていて誰か分からないだろう)。

俺はその人に目をつけられたくなかったので、目立たないようにしていたのだが、ラブかは問題児だったのでよく怒られていたのを覚えている。怒鳴り声はよく響いていた。

普段から厳しく、礼儀には特にうるさかった。そんな人に「いらない」と伝えるラブかの気の強さに引いてしまう。

「あの時は馬鹿だった、今のお前よりもな」

「俺誕生日なのに酷くない?」

ラブかが早く食べろとケーキを指差す。ラブかは甘いのが苦手なので、自分用のケーキを買っていない。

「一口あげようか」

フォークで一口分取り、ラブかの前に差し出す。1人で食べるケーキよりも2人で食べた方が美味しいだろう。

「……一口だけな」

「ちょろいね」

「うっせ」

今年も誕生日を祝ってもらえて、俺は幸せだ。

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