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入間紫音ハ推理スル。

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入間紫音ハ推理スル。

2 - 第2話 情報提供のお時間です

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2023年01月09日

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bl「ねぇスマイル。この事件どこが面白いの?」

僕はスマイルに何となく聞く。教室で倒れてる鈴村京花を発見した翌日、あの後スマイルは「考えをまとめたい」と言い、家に帰っていた。そして、今は朝の通学路。被害者が意識不明にはなったものの、回復した。しかし、まだ入院している。学校は休みなしで通常登校になっていた。スマイルは横目で僕を見た後、口を開く。

sm「まず一つ目は、彼女の症状だ。家に帰ったあと、ともさんに症状を聞いたが、意識障害を伴う悪心や嘔吐が主らしい。しかし」

そこで言葉を切ったスマイルは、顔を僕の方に向ける。そして、口の端を上げて言う。

sm「それらの原因は分からない。医者でもな」

分からない?医者でも診断がつけられない病院に鈴村京花はかかっているのだろうか。スマイルは言葉を続ける。

sm「今のは一つ目だ。もう一つある。それは、彼女に最近似たようなことが、起こっていると言うことだ」

bl「ともさんも言ってたね。入退院を繰り返してるらしいよ」

sm「その通りだ。もしかしたら彼女は何者かに、命を狙われてるかもしれない。もしそうだとしたら…」

再び言葉を切ったスマイルは、今度は獲物を見つけた猛禽類みたいな笑みを見せる。

sm「かなりスリリングな事件になる」

…それに巻き込まれるのは僕だけどね。今にもスキップしだしそうなほど軽い足取りのスマイルを横目に、内心でため息をつく。恐らく、面白い謎を見つけてテンションが上がっているのだろう。学校が近くなったとき、校門に目立つ赤髪で糊のきいたスーツを着た人物を見つけた。その人物は僕らを見ると片手を上げた。

sm「おはようございますともさん。事件現場に情報収集ですか?」

先にスマイルが挨拶をする。警視庁捜査一課の刑事である赤賀智也。約三ヶ月前に起こった事件でお世話になってからと言うもの、僕らの事件解決に協力してくれていた。

tm「まあそんなとこかな。ついでに、スマイル君に有力な情報を提供しようと思ってね」

少し得意気な笑みを浮かべながら言った。

sm「天下の警視庁が一般人、しかもただの学生に捜査情報を漏らしていいんですか?」

さっきとは違う無表情で彼は聞く。

tm「普通なら駄目だよ。でも、君らは口が固いし、それに、普通の学生じゃないだろ?」

sm「まあそうですね。俺は天才ですし」

相変わらず無表情で、自らを天才と言うスマイルに、ともさんは少し苦笑する。

tm「まあそんな訳で、君らに情報を与えたい。今日の夕方は空いてる?」

bl「学校ではしないんですか?」

会話に入ってそう言った僕を、スマイルは少し湿った視線を僕にぶつける。

sm「俺らはともかく、一般人の前でこんな話できるわけないだろ。それに…」

離れた位置にある時計を彼は見つめる。三秒ほど見たと思うと、こっちに視線を戻した。

sm「さすがに急がないと遅刻する」

bl「ウソッ!?」

思わず声がでかくなる。それと同時にスマイルが耳を両手で塞ぐ仕草を見せる。スマイルは聴覚が鋭いため、大きな声には過敏になりやすいのだ。スマイルに「ごめん」と言う。べつにいいと言うように、片手をヒラヒラさせる。

sm「じゃあともさん。後で連絡ください」

ともさんは「了解」と言うと、身を翻した。それを少し見送ったあと、僕らは急いで校舎へと駆けていった。


sm「ん~…ピザトーストで」

悩んだ末、ピザトーストを注文する。「じゃあ僕も」と、二人とも同じものを頼む。店員は一分の隙もない営業スマイルを見せながら、「了解しました」と言うと、帰っていった。学校が終わったあと、僕らはともさんに呼び出され、近所のファミレスに来てた。僕らが注文したのを見ると、ともさんは小さな手帳に落としていた目を、こちらに向ける。

tm「それじゃ、情報提供を始めるよ」

それが合図に、ちょっとした会議が始まる。

bl「で、どんな情報をくれるんですか?」

スマイルに代わり、僕が聞く。こういう話し合いの場では、いつもスマイルは本を読んでる。聴覚が優れているので問題はないが、それでは話が進まないので、いつも僕が聞くことになっていた。

tm「情報っていうのは、犯人候補が見つかったっていうことだよ。彼女の周辺を探ってね」

スマイルは少し視線をともさんに向けたかと思うと、またすぐ本に戻る。ともさんは「話ていいかな?」と、尋ねる。僕は「どうぞ」と言い、続きを促す。

tm「犯人候補は三人。手短にまとめるよ。まず一人目は、雪野優(ゆきのゆう)。バレー部のキャプテン。三年生だね」

手帳を見ながら話始める。恐らく、手帳に情報が書かれているのだろう。

tm「雪野優と被害者は中学時代に先輩後輩の関係でね、同じバレー部だったらしい」

そこまで話したとき、ともさんが頼んだコーヒーが来る。ともさんは、ガムシロップを一つ入れると一口飲む。そしてまた、話始める。

tm「雪野優の彼女を気絶させる動機としては、彼女の中学三年生の時にあって」

言葉を切ると、「ここまで大丈夫?」と聞く。スマイルは早く続きが聞きたいのか「早く話せ」と、乱暴な口調で言う。僕らはそれに慣れてるので、ともさんも気にすることなく再び話す。

tm「彼女の中学最後の試合で、被害者のせいで大きな怪我を負ったらしい。そのせいで、彼女は試合に出れず。そして、被害者が彼女の代わりに出場することになった。被害者の実力は高く評価されてるみたいだったからね」

そこで、僕らの頼んだピザトーストが届く。店員はそれをテーブルに置くと帰っていった。ともさんの言葉を、僕はピザトーストをかじりながら反芻する。確かに、怪我を負わせた本人が自分の代わりに試合に出るとなれば、かなりの恨みを抱くだろう。

tm「次が雨宮陽子(あめみやようこ)。二人ともこの人は知ってるかな?」

この言葉に、僕らは頷く。僕は「プライドが高いのと性格がきついので有名な英語教師です」と言う。

tm「そう。まさにそれが動機ではないかと考えられてるよ」

性格が動機?いったいどう言うことだろうか。「どう言うことですか?」と、ともさんに聞くと、話始める。

tm「彼女は授業中、被害者によくスペルの間違いを指摘されていたらしい。プライドの高い彼女は自分の完璧を崩そうとする被害者を恨んでいると考えられてて、それがもし犯人だったときの動議だと、捜査本部はまとめているよ」

プライドの高いあの英語教師ならそれが動機になってもおかしくないだろう。でも、間違いを指摘されただけで、そこまでいくだろうか。そんな僕の心を読んだかのように、スマイルは本に目を落としたまま言う。

sm「人はちょっとしたことで理性を失う。もし雨宮陽子が犯人ならあいつにとっては被害者のスペルの間違いの指摘。それが理性を失うきっかけでもおかしくない」

その言葉にともさんも頷いている。人間とはそう言うものなのだろうか。

tm「最後が立石直也(たていしなおや)。被害者とは違うクラスだけど、同じ図書委員だね」

sm「動機は?同じ委員と言うだけでは殺意はわかないだろ」

スマイルは手を付けていなかったピザトーストを口にいれながら聞く。

tm「実は、立石直也は幼い頃に父親を亡くしていて、今は年の離れた兄と五十代の母と一緒に生活してるよ。生活には困ってないけどね」

ともさんは僕らにチラリと視線を向け、視線を手帳に戻し、また話す。

tm「立石は父の形見で、小さなロボットのキーホルダーが宝物だったらしい。しかし、委員活動中に忘れ物をしたらしく、教室に戻った。そして帰ってきたとき机においてたキーホルダーが無くなってた」

その後は何となく予想できた。

sm「鈴村京花が故意かは知らないが、捨てたんだろ」

どうやら僕と同じことを考えてたらしく、スマイルはページをめくりながら言う。それにともさんは「その通り」と答える。

tm「ただ、続きがあってね。話しても言いかな?」

こちらを見る。僕の代わりにスマイルが「いいぞ」と言うと、ともさんは口を開く。

tm「それに気づいた立石は、被害者に対して謝罪を求めたらしい。けど…」

sm「それを拒否した」

ともさんの言葉をスマイルが受け継ぐ。またしてもともさんは「その通り」と言った。そして、話しは終わりと言うように、息を吐いた。

tm「これで犯人候補は全部だよ。何か分かった?」

スマイルは本を閉じ、視線を少し上に向ける。今の話を思い出しているのだろう。たっぷり三分ほど黙ったかと思うと、こちらに向き直る。

sm「まだ情報が足りない。もう少し必要だ。ともさん。鈴村京花はどこの病院にいる」

ともさんは手帳のページをめくると、途中で手を止める。「あったあった」と、言う。

tm「えっと、白尾総合病院の内科病棟に入院してるね」

スマイルは「なるほど…」と言うと再び黙りこむ。

sm「ぶるーく!」

bl「うわっ!何?」

唐突にスマイルが声を出す。その顔には、無邪気な子供のような笑みが浮かんでいた。

sm「明日の放課後、鈴村京花に会いに行くぞ!」

次回へ続く

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