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タクミは、意識が遠のきそうなほどの熱気に包まれていた。静寂の中で、ただただ自分の心臓の鼓動だけが耳に響く。
その鼓動が速くなり、手のひらに冷や汗を感じながら、彼はゆっくりと前に進み始めた。火葬炉の扉が、ゆっくりと開く。
その瞬間、突如として熱風が彼を襲い、顔の皮膚が痛みを感じる。炎が立ち上る音が、地獄の叫びのように耳を打つ。
まるでその炎が、彼を引き寄せているかのようだった。
「ここに入れってことか…？」
タクミは息を呑み、目の前に立ち尽くす。その熱気が顔を焼き、額に汗が滲む。
目を細めて見つめる先には、燃え盛る火葬炉の内部が広がっている。空気が歪んで見える。
目の前の炎が、まるで自分を食い尽くそうとするかのように、赤く煌めきながら、彼をじわじわと引き寄せる。
足元が震える。
身体が硬直していく。
彼の足は、重りでもつけられているかのように動かない。
だが、周囲の人々が無言で見守る中、タクミは足を踏み出す。
その足が、焼け付くように熱く、皮膚を焦がしそうな感覚に包まれる。
「だめだ、これは…」
タクミは心の中で呟くが、口からは声が出ない。目の前に迫る火葬炉の入り口に、足を運んでいくその足音だけが、無情に響く。
火葬炉の中は溶鉱炉のように真っ赤に染まっており熱さが彼を包み込む。熱が肌を突き刺し、目の前に立つ自分の姿が、なんとも歪んで見える。
目の前の炎が、まるで彼を見透かすように揺らめいている。
「もう、後戻りはできないのか…？」
その思考を振り切るように、タクミは一歩踏み出す。
その瞬間、手のひらが火葬炉の冷たい金属に触れ、思わず身体が震える。
体温が一気に上昇するのを感じる。
顔が真っ赤に焼け、汗が一気に噴き出す。息がしにくくなり、口元が乾いていく。
火の熱が、内臓にまで届くように感じ、全身が熱波に包まれていく。そして、タクミは火葬炉の縁に足をかける。
その一歩が、まるで死への一歩のように重く感じられる。その足を、炎の中に踏み入れた瞬間、熱風が全身を包み込む。
「ああ、熱い…！」
火葬炉の中に足を入れた瞬間、全身が焼けつくような痛みで満たされる。
目の前の炎が、彼を歓迎するかのように勢いよく揺れる。
顔が焼け、腕がひりひりと痛む。
内臓が溶けていくかのような感覚が広がる。
その瞬間、タクミは理解した。
この痛みが、死に至る前の最後の儀式だと。
だが、それでも彼の体は火葬炉の中に引き寄せられ、とうとう全身が炎に包まれた。
炎が、彼の身体を溶かしていく。
一瞬、全てが消え去り、無音の世界に包まれる。
その音もなく、体が炭化し、灰に変わり、煙となって立ち上る。
そして、タクミの心臓が完全に静まり、彼の魂が解き放たれる。
その時、彼はついに悟った。
「すべてが最初から決まっていたことだ」
