side wakai
若井)ねぇ元貴、
時刻は10;30
窓から見えた夜桜がとても綺麗だったから
散歩がてら一緒に観に行こうと元貴を誘った。
元貴)ん?
若井)夜桜がきれいだよ、一緒に見に行こう。
元貴)いいよ。
俺と元貴はダウンジャケットを羽織りカメラを持って家を出た。
元貴)わぁ〜綺麗だね。
若井)ね、すごく綺麗。
月明かりに照らされて、夜風で宙を舞うピンク色の花びらがきれいだ。
((カシャッ
元貴のカメラからシャッター音が鳴り響く。
元貴の目に反射された、月と桜の木。
自然とカメラを元貴と桜の方に向けて、俺もシャッターを押す。
元貴)俺撮ってるの?笑
若井)きれいだったから、つい
そう言うと君は笑った、
カメラを構えながら、どんどん桜の木に呑まれていく元貴の後を、急いで追った
若井)あ、元貴待って、((走
元貴は足を止めて振り返った、
元貴)若井、手つなご。
優しい声でそう言った。
でもどこか不安そうな目をしていた。
俺は元貴の手を優しく握った。
歩っていると、桜を眺めていた元貴の鼻に桜の花びらがちょこんと乗った。その時、赤と青のグラデーションが架かった1羽の蝶々が元貴の元へ飛んできた。蠱惑的で心做しか良い香りがする。
元貴)ははっ、くすぐったい笑
若井)かわいいね、
((カシャッ
俺はまたシャッターを押した。
蝶々と戯れている元貴が美しくて、今にも桜のように散ってしまいそうなくらい儚かった。
((ギュッ
俺は元貴を抱きしめた。
若井)元貴、愛してるからね。
元貴)…俺もだよ。
そう言って元貴は俺にそっと口付けをした。
唇が離れた後、元貴は全身の力が抜けた様に、
俺の方に倒れ込んだ。
若井)元貴…?
俺は元貴を抱えて桜の木の下に座り込んだ。
若井)もとき、元貴!、
どれだけ呼んでも君から返事は無い。
君は安心した様な、寂しそうな、
そんな顔をして”眠っていた”。
あ、さっきの蝶々……そうか、元貴の周りを飛んでいたのは、香りを振り撒いてたんだ…
今思うとあの蝶々からはいい香りはすると思ったが、どこか毒々しさも感じた。
若井)ねぇ、泣もとき、…泣
頼む夢であってくれ…神様、、
桜の木は俺と元貴を呑み込んだ
君の頬に俺の涙がぽつりと落ちた。
当然おとぎ話のように
涙に触れたら目覚めるなんてことは無い。
それでも俺は現実を受け止めきれず、
心のどこかで淡い期待を抱いた。
もう一度だけで良い、やり直したい…
俺も目を瞑った。
元貴を抱きしめて、眠りについた。
元貴が目覚めないのなら、俺も目覚めたくない。
元貴が居ない人生を送るくらいなら、
今ここで一緒に、、、
コメント
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儚、、!