櫂慶元年、横浜。
太陽が燦々と降り注ぐ桜木町の歩道を、金髪に染めたポニーテールのギャルが闊歩していた。
彼女の名は三寳櫻(みつほうさくら)。一見、どこにでもいる普通のギャルに見えるが、実態は「異能」を持つ、貶されし大地に生まれた戦士だった。
「やばっ、タピオカなくなっちゃった!」
手に持つカップを見下ろし、三寳は大きく舌打ちをした。彼女の異能の一つ、魚を操る力で、近くの水槽から魚を飛び出させて無理やりタピオカの代わりに投入しようと考えたその時だった。
「お嬢さん、その発想、とても斬新ですね。」
紳士的な声が背後から響いた。振り返ると、そこにはピンと伸びた背筋のイギリス人が立っていた。シルクハットにステッキ、どこから見てもロンドンの街角からワープしてきたかのような装いだ。
「え、だれ? っていうかどこイギリス?」
「私の名はアーサー・ベンフィールド。イギリス王室に仕える執事です。こちらは吾輩の連れで、名をウラジーミルと申します。」
アーサーが手を差し出すと、その足元からロシア語で鳴くペルシア猫が現れた。
「ニャー!ドーブリジェーニ!」(こんにちは!)
三寳は目をぱちくりさせながら後ずさった。
「猫、しゃべるんだけど!?」
「いやいや、言語能力は猫界の標準ですよ?」とアーサーが涼しい顔で返す。
ウラジーミルはどこか上から目線で「そこのお嬢さん、もっと教養を身につけたまえ」と言わんばかりの表情だ。
しかし、そんな平和なやり取りも束の間、遠くの海岸線から黒煙が立ち上るのが見えた。
「やば、あっちでバトってんじゃん。」
三寳が目を細めて見ると、謎の巨大魚が暴れているではないか。
「さて、行きますか。」
三寳はポケットから小型ナイフを取り出すと、迷いなく自分の腕を一振りで切り落とした。すると切り口から生まれた赤黒い液体が凝固し、もう一人の三寳が目の前に立っていた。
「分身、出陣。」
分身は無言でうなずくと、黒煙の方向へダッシュで向かった。
「驚きましたね。彼女、ただのギャルではないようだ。」
「ニャー。イギリス料理より複雑だ。」
一人と一匹の出会いが、異能ギャグバトルの幕開けとなる。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!