夜の基地。白川はキッチンでコーヒーを淹れていた。部屋は静かで、遠くで機械の音がかすかに響いている。
そこへ、霧島がふらりと現れる。
霧島:「お、いい匂い。」
白川:「……あんた、また何しに来たの?」
霧島:「いや、コーヒーの匂いに釣られたんだよ。そんなに警戒するなって。」
白川は呆れた顔をしつつ、カップを二つ用意する。
白川:「……まぁ、せっかくだから飲む?」
霧島:「お、珍しいな。優しいじゃん。」
白川:「勘違いしないで。余っただけ。」
ふたりはカウンター越しに向かい合い、静かにコーヒーを飲む。
霧島:「なぁ、白川。」
白川:「……何?」
霧島:「好きな人、いる?」
白川は一瞬むせかける。
白川:「……は!? 突然何?」
霧島:「いやー、さっきの膝枕事件からさ、気になっちゃって。」
白川:「だからあれは……!」
白川が反論しようとしたそのとき、霧島が不意に真顔になる。
霧島:「俺さ……好きな人、いるんだよ。」
白川は思わずコーヒーを置く。いつもふざけている霧島が、そんな真剣な顔をするのは珍しかった。
白川:「……誰?」
霧島はカップをくるくる回しながら、少しだけ視線を落とす。
霧島:「……秘密。」
白川:「は? 何それ。言いかけておいてそれ?」
霧島:「まぁまぁ、怒るなって。」
霧島はいたずらっぽく笑うけれど、どこか寂しそうにも見えた。
白川:「……本気なの?」
霧島:「……あぁ。結構な。」
その言葉に、白川の心が少しざわつく。
白川:「ふぅん……そっか。」
霧島:「ま、相手には多分、全然気づかれてないけどな。」
霧島はそう言って、少し笑った。
白川:「……あんた、意外とそういうとこあるよね。」
霧島:「どういうとこ?」
白川:「……ヘタレ。」
霧島:「おい、傷つくわwww。」
でも、霧島の笑い声にはどこか優しさがあった。
白川は、少しだけ胸が痛んだ。