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高一の夏。
友達の家に遊びに行った。
メンバーは同じ部活の男子で僕含めて4人。
そのなかのひとりが、スマホを僕に向けてかざして
「なあなあ…胸、デカくね」と
裸の画像を見せてきた。
「あ、それ。××じゃん…エロいよなぁ」
「いま一番人気だっけ?」
「××ちゃんにフェラされてぇ〜」
僕は思い知った。
たぶん、男の子の普通はこういう風に女性の裸に興奮するんだってことを。
自分はそうではない。
ゲイではない。バイでもない。
子供のころから、実の兄が好きだった。
兄さんだけ。
僕のこころを動かせるのは、甘いお菓子でも楽しい遊びでもなく、
「隼夜」
当たり前に隣にいるひとに手を引かれて、名前を呼ばれる。それだけで幸せだった。歩きつかれたときはおぶってくれて、風邪をひいたときは氷枕を取り替えてくれた。
ずっとずっと、兄さんの優しさが大好きです。
「…木月?」
「あ、うん?す、すごいおっぱいだね…」
「だろ?」
僕を現実に戻す男子高校生の会話。
「へへっ、木月ぃ、やけにウブな反応してんな?まさか見ないのかよ、えーぶい」
ははっ、とみんなに揶揄われる。
アダルトビデオ。
男女のセックスを映した、ビデオ。
初めて見たのは中学の時だった。
自分のスマホでもパソコンでもなく、兄さんのスマホで見た。一つ上の兄さんは高校に上がっていて、中学生の僕とは学校が分かれたから、その寂しさでスマホのロックを解除した。
このことは、兄さんには言っていない。
言えるはずもない。
指が触ってしまったウェブブラウザのアプリには、
生々しい映像が一時停止の状態でおかれていた。
「……うそ」
ボブに近い黒髪。眼鏡。切れ長の瞳に長い睫毛。
犯されていた女性と自分を重ねてしまった。
瞬間、頭の中がスパークする。
兄さんに抱かれたい。キスして、抱き合って、繋がって、気持ちよくなりたい。
僕が性をはっきり意識した出来事は、後ろめたすぎて、兄さんが戻る前に自室に隠れた。
顔は熱くて、呼吸は苦しくて、身体は勃起していた。
「兄さん……ひょっとして、僕のこと…」
そんなことは己の浅ましい願望だと唾を飲み込むように腹に鎮めて、それでも消せない愛しさに目を瞑った。
「…おい、」
「き、木月?」
「刺激が強すぎたか」
みんなの声がする。
いまは、
「僕は洋ものが好きなんだよね」
…見たことないけど。 知ってるフリ。
得意げに鼻をならしてみれば、嘘つきの嘘は真実になる。
兄さん、貴方が大好きです。
スマホ覗くくらい貴方に狂っています。
貴方は?
僕に似た女の子で抜いてないで
早く僕を貴方のものにしてください